仕出し弁当によるA群レンサ球菌の集団感染事例−茨城県
1998年8月19日、水戸市内の病院から、医療関係者のソフトボール大会が16日に開催され、その参加者よりA群レンサ球菌感染が集団で同時に発生したとの通報があった。疫学調査の結果、8都県の大会参加者423名中342名が17日夕刻頃から咽頭痛、発熱(38〜39℃)、倦怠感等を発現し、有症者が大会日の昼食にM社の同メニューの弁当を喫食していたことが明らかになった。弁当は1施設内で大会用に当日未明から製造されたものであった。
患者および弁当製造従事者の咽頭ぬぐい液、大会日の弁当保存検食、弁当原材料、製造施設のふきとり検体についてA群レンサ球菌の検索を実施した。検査は選択増菌にSEB培地(ニッスイ)を使用し、羊血液寒天培地でβ溶血を示したコロニーを分離、純培養し、溶血レンサ球菌群別および型別用免疫血清(デンカ生研)を使用し、アピストレップ20(bio Merieux)にて生化学的性状を確認、菌種の同定を行った。
結果は、1)咽頭ぬぐい液で患者268検体中65検体および弁当製造従事者22検体中7検体より、2)弁当保存検食23検体中6検体(野菜の煮物2種、牛肉信田巻き、シュウマイ、厚焼き卵、カットメロン)より、Streptococcus pyogenesT22型が検出された。
そのうち、国立感染症研究所へ患者由来15株と製造従事者由来7株および食品由来6株の計28株について、ゲノムDNA解析およびA群レンサ球菌発赤毒素遺伝子(Spe A、Spe B、Spe C)の検出を依頼したところ、制限酵素SmaI、SfiIを用いたパルスフィールド電気泳動法(PFGE)により、ゲノムDNAの電気泳動パターンは2種類に分類され、患者由来11株と弁当製造従事者由来7株および食品由来5株の計23株はAパターンを、患者由来4株と食品由来1株の計5株はBパターンを示した(図)。また、PCR法により28株すべてからSpe BおよびSpe Cが検出された。
患者、弁当製造従事者、弁当から同一由来と推定されるA群レンサ球菌T22型が検出され、また疫学調査結果と併せ、今回の事例が昼食弁当を原因とした大規模な集団呼吸器感染であったことが判明した。
茨城県衛生研究所
山口克枝 増子京子 根本治育
藤咲 登 平岡洋典 村田 明