噴水を汚染源としたクリプトスポリジウムの集団感染、1997−米国・ミネソタ州
水利用のリクリエーション施設を介したクリプトスポリジウム症が増加傾向にある。本報告はミネソタ動物園の噴水を介した大規模な集団感染の調査概要である。
本件の発端は、1997年7月10日にミネソタ州保健局へ、同年6月29日に動物園での誕生会に参加した10名の小児のうち4名ほどが胃腸炎に罹患したとの届け出があったことによる。来園者リストの提出を受けて聞き取り調査がなされた。当初の患者判定基準は来園者で嘔吐または日に3回以上の下痢症状を示す者とした。リスト記載の120名のうち11名(9%)がこれに該当し、いずれも園内の噴水で遊んだ経歴を持っていた。州保健局による検便で患児10名中9名からオーシストが検出された。ところが、このうちの2名は地元の医療従事者による検便で陰性と判定されていた。調査対象を噴水で遊んだ者に広げて再検討したところ、当初の11名を含む 369名が該当した(6名入院)。うち、73例(20%)は検便陽性であった。患者の年齢は0〜65歳で、10歳以下が333名にのぼった(中央値6歳)。1名を除き全員が下痢を訴え、腹部痙攣86%、嘔吐78%、発熱63%、血便が3%に見られた。潜伏期の中央値は6日間、有症期間は7日間であった。本件では9名の二次感染者が出た。噴水の汚染原因はオムツをした幼児の水遊びと推測された。噴水の管理は概ね妥当であったが、事件後に周囲に柵を設けた。ちなみに、園内で動物との接触による感染の可能性は否定されている。
なお、本事例を通して、はからずも検査機構を含む現行のクリプトスポリジウム症対策が機能していない事実が露呈したが、1997年の医師および医療従事者に対する調査でも意識の低さが指摘されている。
(CDC、MMWR、47、No.40、856、1998)