小学校で流行したインフルエンザ様集団発生からのエコーウイルス17型の分離−島根県
1998年10月27日、松江市内の小学校(在校生717名、22クラス)で1年生3クラス中1クラスで欠席者が多く、インフルエンザ様疾患の集団発生による学級閉鎖が行われるとの報告があった。管轄保健所が調査したところ、クラス37名中14名に発熱(38℃〜40℃)、上気道炎、頭痛を主症状とし、鼻汁、嘔吐、下痢が20〜30%にみられたが、発疹は認められなかった。有症者のうち11名が欠席しており、8名の患者についてうがい液を採取しウイルス分離を試みた。
ウイルス分離にはMDCK、RD-A30、FL、293、HEL、AG-1の6種類の細胞を用いた。MDCK細胞によりインフルエンザウイルスは分離されなかったが、RD-30A細胞の初代培養で8名中5名、HELの初代培養で2名の材料からエンテロウイルス様CPEが確認された。他の細胞では2代継代でもCPEは確認できなかった。そこでRD-A30細胞で分離した5株のウイルス液をメチルセルロース重層下でプラック中和法により、今年本県で分離されているエンテロウイルスのうち、比較的高頻度に同定されている、エコーウイルス(E)11型、E18、E30およびコクサッキーA9型の単味血清について同定を行ったが、いずれの抗血清に対しても中和されなかった。そこでエコープール血清(EP95)を用いて再度同定を行った結果、5株ともEP95のNo.3、No.4のプール血清でプラック数が1/5程度に抑制、Schmidt pool血清では、No.2、No.10プール血清で1/2程度のプラックに抑制、また、50単位の単味血清(Lot 9322感染研)で完全に抑制されたことから、E17と同定した。
さらに、発症者の急性期、回復期血清について分離株を用いて、50%プラック減少法により抗体測定を行った結果、7名中7名に<1:8→1:64〜256への抗体価上昇がみられた。
これまでE17は、1969年に全国的に流行し、1993〜1996年にかけて散発的に分離され、そして今年は広島市、神戸市、福岡市で分離されているが、本県でE17が分離されたのは初めてである。また、今シーズンに分離したエンテロウイルスの未同定株の中に本ウイルスが多数存在する可能性が考えられる。
島根県衛生公害研究所 松田裕朋 飯塚節子 穐葉優子 板垣朝夫