サイクロスポラ症の集団発生、1998年5月−カナダ・オンタリオ州

本報告は1998年5月〜6月にかけてトロントで発生したサイクロスポラ集団感染の予備調査とその他12カ所での集団感染事例の要約である。

トロント公衆衛生局は5月8日にホテルで会食した客にサイクロスポラ症が発生した旨の連絡を受けた(同席者6名も下痢)。本症の判定基準を会食後2週間以内に胃腸障害、または発熱等の全身症状を示した患者で、検便陽性、下痢、4つ以上の胃腸症状のいずれかを呈する者とした。会食参加者は174名で、128名が問診に応じた。そのうち29名(23%)が本症と判定され、3名が検便陽性であった。潜伏期は8日間が中央値であった。29名全員が下痢症状を呈し、有症期間の中央値は7日間であった。発病と強い相関が認められた食材はラズベリーで、イチゴ類の盛り合わせを食したとされる108名のうち28名(26%)が罹患した。食さなかったと目される20名の中では1名(5%)の発症に留まった。

トロントの事例を含め13の集団感染についても調査が行われているが、全事例で2名以上の患者が発生し、各々少なくとも1名は検便陽性であった。全体で192名の罹患者が確認され、うち46名が検便陽性であった。集団感染事例は5月2〜23日に発生し、すべてに共通した食材はラズベリーであった。事例ごとの罹患率の中央値は89%(23〜100%)であった。ラズベリーを食したとされる者にしぼると、事例ごとの罹患率の中央値は100%で、食べなかったとされる者では0%であった。オンタリオを含む8事例でラズベリーの産地が特定されたが、すべてグアテマラ産であった。ちなみに米国での集団感染で原因食として疑われたレタスやバジルの関与は今回の事例では否定された。

(CDC、MMWR、47、No.38、806、1998)

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