予防接種問題検討小委員会(厚生省)中間報告の概要

1994(平成6)年に改正された予防接種法には、施行後5年を目途としての検討規定が設けられており、これに基づいて1998(平成10)年6月より公衆衛生審議会伝染病予防部会のもとに予防接種問題検討小委員会が設置され、このたび中間報告がまとめられた。その概要は以下の通りである。

 1.国の責務:予防接種は感染症対策として重要なものであり、今後も勧奨接種の考え方を基本として、予防接種対策を推進していくことが必要である。このためには国民に予防接種に関する情報を的確に提供し、理解を得るようにしなければならない。対象疾患について複数の類型化、例えば接種勧奨の程度、接種に向けての努力義務の有無、その他による検討が必要である。ワクチン開発等の調査研究の推進、国際協力および国際的視野に立った予防接種対策の推進も必要である(例:WHOによる麻疹根絶計画への協力、わが国の麻疹発生状況についての海外からの批判に対する考え方の必要性など)。

 2.国民の責務:接種を受ける側には、予防接種に関する理解、接種を受けるか否かの判断、接種後の対応に注意するなどが求められるが、そのためには予防接種制度やワクチンの有効性や健康被害発生の可能性などについて、正確な情報を国等が提供することが重要である。接種医に対しては重篤な副反応を最小限に抑えるために十分な予診を行うことなどが求められるが、接種を受ける側は当日の健康状態などに関する情報などを接種医に正確に伝えることが重要であり、このための方策についての検討が必要である。

 3.対象疾患および対象者:これまでの予防接種法による対象疾患は主として乳幼児・学童を対象としたものであったが、感染症予防という観点からすべての年齢層を視野に入れた検討が必要である。また個人予防の高さということを考え、現行の7対象疾患(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・麻疹・風疹・日本脳炎)に加えて、インフルエンザ・水痘・流行性耳下腺炎・肺炎球菌性肺炎などの4疾患についても法による予防接種の一部として、その有効性、安全性、費用効果などについて検討すべきである。

対象年齢については、高齢者を含めたすべての年齢を視野に入れ、個々の疾患について検討すべきである。また、やむを得ない事情により標準対象年齢の範囲からはずれてしまったものの接種についても、弾力的に行えるよう検討すべきである。

 4.予防接種の具体的実施:実施主体は地域住民に密着する市町村であり、医師会等の協力を得て個別接種を推進することが必要であるが、一方、各都道府県において予防接種センター的な機能を充実する方向についてもさらに検討を要する。地域性、接種医確保の実状、中学生における保護者同伴の必要性などについても柔軟な方策を考慮することが必要である。また学校等における普及啓発も重要であり、国は文部省と、市町村は教育委員会などとの十分な連携をとることが必要である。

 5.情報提供のあり方:予防接種率の統計等についてはその分析方法などについて見直すべきであり、また母子手帳などにおける記録方法についても検討する必要がある。国・都道府県・市町村が提供する予防接種に関する情報の内容およびその方法については、これまでのものは必ずしも十分なものではなく、国立感染症研究所感染症情報センターをはじめとする各機関が連携を深めて改善していく必要がある。海外渡航者に対する感染症・予防接種情報の提供も、検疫所等において積極的に行うことが重要である。

 6.健康被害救済制度:定期の予防接種において定められている接種の期間外に接種を受けたことに伴う健康被害救済については、さらに検討を進めることが必要である。給付の種類については、障害児養育年金等と独立した形での介護手当の位置づけについて検討するべきである。また再審査については、公衆衛生審議会認定部会と独立した体制の構築と、その手続きを明確にしていく必要がある。

この中間報告は、これまで予防接種問題検討小委員会において審議された主な論点について整理記載されたものである。中間報告を公表することによって広く各方面からの意見を求め、その上でさらに審議をすすめ、1999(平成11)年6月を目途に最終報告が作成される予定となっている。本中間報告について詳細が必要な方は、厚生省結核感染症課または国立感染症研究所感染症情報センター・感染症情報室に問い合わせていただければ、全文の入手が可能である。

国立感染症研究所
感染症情報センター感染症情報室

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