健常者からのVero毒素産生性大腸菌(VTEC)の検出状況(1996年7月〜1998年12月)−石川県

1996年5〜6月にかけて、腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7による集団感染が発生したことから、当施設でも1996年7月から健常者(給食従事者、食品取扱業者、保母)の検便対象にO157を加えた。また8月からは国の集計で検出頻度が高いO26、O111 、O128を、11月からはO114も対象に検査を実施するとともに、11月と12月にはO1の動向も調査した。このように市販免疫血清による出現頻度の高いO抗原血清型をスクリーニングした後、Vero毒素(VT)産生性を調べ、VTEC/EHECを検出する方法は現在でも多くの施設で実施されていると思われるが、我々もこの方法によるスクリーニングを1997年5月までの11カ月間実施してきた。しかしこの方法では、1996年7月に本県小松市で集団感染のあったO118のように、該当するO血清型以外のVT産生株は全く検出不能となる。

一方、BeutinらはVT産生性と溶血性とに高い相関性があるとしたので、Beutin血液寒天培地に準じた培地を作り試用したところ、VT産生株はすべて溶血陽性、VT非産生株は約10%程度陽性だったことから、この溶血を指標とした方法を1997年6月から健常者のVTEC/EHECの検査に導入した(本月報Vol.18、No.9、1997参照)。

両法によるVTEC/EHECの検出状況を表1に示した。市販大腸菌免疫血清のうち、6主要O血清型(O1、26、111、114、128、157)を対象にスクリーニングを行ったところ、釣菌株数の2.6%にあたる2,938株が凝集陽性であった。確認同定では9.4%にあたる277株は大腸菌以外の菌で、その67%はCitrobacter freundii、また類属凝集の多いO血清型はO114とO157であった。大腸菌のO血清型は、O1が全体の4.8%、大腸菌の93%を占め最も多く、次いでO128(0.14%)、O111(0.09%)、O26(0.07%)、O114(0.05%)の順で、O157は0.02%と最も低かった。このうち、VTを産生した株は1株(O26:H11 VT1)のみで、検出率は0.0019%、検出頻度は1/51,359であった。

また溶血を指標としたスクリーニングでは、釣菌株数の10%にあたる17,101株が溶血陽性で、うち21株がVT産生株であった。検出率は0.0232%、検出頻度も1/4,313と前者の12.2倍と高かつた。検出されたO血清型とVT型を表2に示した。内訳は市販免疫血清でO血清型別できたのが4型(O26、128、146、157)9株、できなかったのが2型(O91、103)11株、型別不能(Rough)1株であった。このように、市販免疫血清の全43O血清型を対象にしても、21株中9株(43%)が検出されるに過ぎず、また主要6O血清型では8株となり、これ以外の12株は、溶血株のVT産生チェックで検出された。またVTEC/EHECのVT型は、1型18株、2型1株、1&2型2株であった。

以上、健常者を対象に溶血を指標としてVTEC/EHECの検便を実施した場合、平均して釣菌株数の10%に溶血がみられ、溶血株の0.12%にVT産生株がみられた。この方法は、市販免疫血清を用いて特定のO血清型を検出する方法に比し2.3倍も検出率が高く、極めて有用なスクリーニング法であるといえる。

なお、VTEC/EHECのO:H抗原血清型の最終的な型別は、国立感染症研究所で実施された。

石川県予防医学協会
木村晋亮 小崎明子 布村延子 中塚順子 佐々木富子
石川県保健環境センター 芹川俊彦

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