小児の咽頭ぬぐい液から分離されたA群溶レン菌のT型の年次推移−秋田県

秋田県内の1定点観測病院(小児科)において、1996年6月〜1998年12月までに咽頭ぬぐい液から分離されたA群溶レン菌のT型について報告する。

秋田県北部の定点観測病院(小児科)において咽頭ぬぐい液から分離され、当所にT型別のために送付されたA群溶レン菌計206株の年月次別・T型別成績を表1に示した。調査を実施した31カ月間に最も多くみられたT型はT-1であり、T-6、T-3、T-12がそれに次いだ。一方、この期間、比較的分離頻度が高いとされるT-4、T-28、T-11の分離株数は少なかった。また、ある期間、特定のT型が主流行株となる傾向がみられ、その傾向が特に顕著であったT-3、T-6、T-12の年月次別分離株数をまとめた成績を図1に示した。縦軸には分離株数を示した。T-3 は調査を開始した1996年6月に最も多く分離され、その後1997年2月まで分離株数が減少し、同年3月以降はほとんど分離されなかった。T-6の分離株数はT-3の減少と相反するように増加し、1997年3月にピークを迎えた後減少に転じ、1998年3月以降は分離されていない。一方、T-12は1996年11月〜1998年6月まで分離されなかったが、1998年12月に急速に分離株数が増加した。これに対して、分離株数が最も多かったT-1は、調査期間中比較的コンスタントに分離される傾向がみられた。

以上の成績から、1定点観測病院周辺の比較的限局された地域において、異なるT型の溶レン菌が継時的に流行していた事実が示された。限定区域のみならず、県内全域における主流行菌型の推移にも興味が持たれる。なお、劇症型A群レンサ球菌感染症からの分離数が最も多いとされるT-3(本月報Vol.15、No.11、p. 245、1994)が1996年に多数分離されたが、本菌型を原因とする劇症型A群レンサ球菌感染症は確認されなかった。

大館市立総合病院・小児科 高橋義博
         検査科 太田和子
秋田県衛生科学研究所
八柳 潤 齊藤志保子 安部真理子 佐藤宏康 宮島嘉道

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