皮膚粘膜暴露にともなう致死性Bウイルス感染

1997年12月10日、霊長類センターで働く22歳の女性が、アカゲザルの生体物質(およらく糞便)が右目にはねかかったその42日後にBウイルス感染により死亡した。本報告では眼へのはねかかりの危険性と、Bウイルス感染では樹状角膜病変やヘルペス様皮膚病変がいつもあるとは限らないことを警告している。

暴露は10月29日作業者がケージに入った猿を運んでいるときに起こった。彼女の作業はケージに入った猿を扱うことで、霊長類センターではこの作業はBウイルスへの暴露の危険性は低いと判定されていたため、彼女は防護めがねを使用していなかった。暴露後、彼女はペーパータオルで眼をぬぐい、約45分後に水道水で2〜3分眼を洗ったが、事故報告をしなかったため、当該の猿は特定されなかった。

11月8日眼が赤く腫れたため、霊長類センターと同じ大学の医療センター救急室を受診し、自分が霊長類を扱っており、Bウイルスに暴露されたかもしれないことを伝えた。眼ヘルペス感染症に特徴的な樹状角膜病変は存在せず、担当医は感染症専門医に電話で相談した。周辺状況と過去に粘膜皮膚暴露によるBウイルスの感染は確認されていなかったため、専門医はBウイルスは考えにくいが、数日以内に感染症専門外来で経過をみるように勧めた。担当医はサルファ剤の点眼薬を処方した。すぐには感染症専門外来の予約が取れなかった。11月11日症状が悪化し、眼科医によって猫ひっかき病にともなうものを疑われ、ドキシサイクリンを処方された。培養および血清学的にはバルトネラは検出されなかった。11月13日右の眼痛がひどくなり、悪心、食欲不振、腹痛があらわれ、感染症専門医でBウイルス感染が疑われ、即座に入院となった。入院後38.6℃の発熱が出現した。検体が採取され、Bウイルス検査室に送られるとともに、以前の検体もすべて回収された。入院2時間以内にアシクロビル治療が開始され、翌14日三叉神経第1枝と2枝領域に水疱疹が現われたためガンシクロビルに変更された。頭部MRIは異常なかった。24日症状が消失したため外来でガンシクロビル治療を継続しつつ退院となった。

治療が継続されていたにもかかわらず、翌25日右足の脱力、尿閉、下腹部痛に引き続き、上行性の脊髄炎が出現した。再入院し、MRIで頚髄から胸髄にかけて病変が認められ、その後第2頚髄以下の弛緩性麻痺となり、挿管された。神経専門医によりウイルス感染後の急性脱髄性脳脊髄炎と診断され、血漿交換とステロイド治療が行われたが、12月1日〜9日の間に肺炎と敗血症に続いて、ARDSを合併し、12月10日死亡した。 11月13日と14日に採取された眼分泌液と髄液からはBウイルスは分離されなかったが、13日と21日に採取された血清によりBウイルス感染と確認された。暫定勧告はMMWRを参照下さい。
(CDC、MMWR、47、 No.49、1073、1998)

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