ウイルス性肝炎、最近の状況−シンガポール

1993〜1997年の罹患率と死亡率:急性ウイルス性肝炎は1,466件報告された。A型、B型、E型肝炎は各々43%、52%、4.9%を占めた。この期間にはC型、D型肝炎の報告はなかった。年間罹患率はA型は人口10万に対し4.8、B型は4.6、E型0.4であった。急性B型肝炎の致死率は1.1%である。B型以外の死亡はなかった。

A型肝炎(HA)とE型肝炎(HE):生活環境の衛生状態が非常に良くなったためにA型肝炎ウイルス(HAV)に対する血清抗体保有率は低下している。IgG anti-HAVの陽性率は25歳以下では3.8%であった。E型肝炎ウイルス(HEV)に対するIgG anti-HEV陽性率は15歳以下では0.5%、15〜34歳では3.8%であった。HAの感染は二枚貝、イカ、タコを生あるいは不十分な加熱のまま摂食することによる。HA報告例の約半数とHEの三分の一は東南アジアとインド亜大陸からの輸入例であった。

B型肝炎(HB):シンガポールにおいて1985年に開始されたHBの国家免疫計画は成功した。1997年には1歳以下の幼児の94%がワクチン接種を受けた。15歳以下のHB発生率は1983〜1985年は人口10万に対し1.44であったが1995〜1997年には0.14に低下した。母子感染も減少している。小学生でのHBキャリアの割合は1972年では5.7%、1987年は4%、1994年は0%に低下した。HBワクチンの有効性は子どもと成人のコホート追跡調査で確認された。以前に比べて少ないワクチン量の接種方法においても少なくとも12年間は感染を防御した。1993年の血清疫学調査でHBs抗原が45歳以下のワクチン未接種者では5.6%検出され、接種者においては0%であった。HBは性感染症(STD)と密接に関与しているため成人での感染予防が重要である。

C型肝炎:1990〜1992年には16〜21例のC型肝炎が報告されており、罹患率は35歳以上において最も高く、患者の42%は非経口的感染であった。一般人のC型肝炎ウイルス(HCV)感染は少なかった。学童約1,000人ではHCV抗体陽性者はなかった。anti-HCVは、急性non-A、non-B肝炎散発例の8〜23%において検出された。これらの患者の多くは献血者に対するスクリーニングがルーチン化される以前の汚染された血液や血液製剤を通して感染したと思われる。anti-HCVはSTD患者の0.7%、HIV感染者の7%で検出された。HCV遺伝子型はシンガポールでは1型98%、2型5%、3型 7.5%であった。
(Singapore ENB、24、No.12、67、1998)

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