インフルエンザウイルスA(H3)型が分離された急性脳症の1例−広島市
インフルエンザ様疾患と臨床診断され、急性脳症で死亡した3歳8カ月女児の、病初期に採取された咽頭ぬぐい液からインフルエンザウイルスA(H3)型が分離されたので概要を報告する。
臨床経過:1999年1月27日朝から発熱、咳嗽。午前中小児科医院を受診、投薬を受ける。午後は比較的元気に経過する。夕方より発熱(40℃)、嘔吐。午後6時に病院を再受診。意識もうろう状態。治療後も意識レベル回復せず、午後8時救急車にて広島市立舟入病院を受診。受診時の意識レベル200〜300。痛み刺激に無反応、眼球振盪。頭部CT所見は軽度脳浮腫。瞳孔2〜3mm、対光反射あり。急性脳症の疑いで入院。呼吸状態不安定で午後11時45分人工呼吸管理を開始。
1月28日午前1時突然頻脈、瞳孔散大、対光反射消失。午前1時53分血圧低下し、心停止。蘇生術後心拍再開。午前2時5分再度心停止。蘇生術後心拍再開。午前6時から無排尿、血圧低下(測定不能)。午前10時HCUに転床。
1月29日午前0時より排尿あり、瞳孔2〜3mmで固定、対光反射なし。午後1時より不整脈頻発し2段脈となる。心エコーにて心機能低下、心嚢液貯留、心筋肥厚がみられ、心筋炎が疑われた。
1月30日午前10時脳波flat pattern。夕方から尿カテーテルより血尿がみられる。2月1日出血傾向増強(血尿、胃管より出血、点状出血)。2月2日CRPの上昇。午後より経皮酸素飽和度低下、尿量減少。2月3日血圧低下、ほとんど無尿となる。午後より心拍数低下、午後4時27分心停止、永眠される。
なお、発病時に6歳姉がインフルエンザ様疾患に罹患していた。
ウイルス分離:1月27日の入院時に髄液、咽頭ぬぐい液、糞便が採取され、咽頭ぬぐい液からMDCK細胞でインフルエンザウイルスが分離され、分離株を抗原とするA/シドニー/5/97(H3N2)感染免疫フェレット血清(日本インフルエンザセンター分与)のHI価は1:160であった。
広島市衛生研究所
池田義文 上村真由美 桐谷未希 阿部勝彦 山岡弘二 荻野武雄
広島市立舟入病院 藤井 肇 岡野里香