HIV抗体の迅速検査用免疫クロマト法キットの感度および特異性

緊急時のHIV抗体検査として簡便・迅速、高感度でしかも安価なキットの開発が望まれていたが、従来の迅速キットは特に感度に問題があり、厚生省の承認が得られなかった。最近上記の条件をほぼ満たす(安価?)キット;「ダイナスクリーンHIV-1/2 」(ダイナボット社製)(承認日:1998年8月25日)が入手可能になったのでその特徴を紹介する。

 特徴:(1)手技が簡単、(2)特殊な設備および機器が不要、(3)短時間(15分)で判定、(4)血漿および全血で検査、(5)室温で保存可能(持ち運びや輸送に便利)、(6)大量検体の検査には不向き、などがあげられる。

 原理および操作方法:免疫クロマトグラフィー法により、抗HIV-1抗体および抗HIV-2抗体を検出するキットである。1型と2型の区別はできない。検体中のHIV抗体はセレニウムコロイド標識HIV抗原と結合してシート上を移動し、シートの上部に固相されたHIV抗原に捕捉され、セレニウムコロイド由来の赤色のラインが現れる。

 感度および特異性:HIV-1/2の感染初期における検出時期の比較をBBI社のセロコンバージョンパネル血清を用いて既承認のキットと感度を比較した()。既承認のPAおよびELISAと同等であり、感度は良好であった。また、血清/血漿と全血で感度差はなかった。サブタイプに関してはA、B、C、D、E、F、G、Oのすべての亜型感染者の抗体が検出できた。HIV抗体陰性血清58検体をこのキットで調べると、1検体が偽陽性結果を示した。陽性検体の最終判定にはウエスタンブロット法などの確認試験が必要である。

国立感染症研究所
エイズ研究センター 吉原なみ子

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