1998/1999シーズンの埼玉県内におけるインフルエンザ流行とウイルス分離状況
埼玉県衛生研究所疫学部は疫学科とウイルス科で構成されており、県内のインフルエンザ対策については、前者は、感染症発生動向調査事業で、各定点医療機関からのインフルエンザ様疾患の患者報告数、また、各市町村教育委員会の協力を得て、インフルエンザによる学級閉鎖数についても週単位で集計・解析している。後者は、医療機関からの依頼を受けて、患者検体からウイルスの分離を行っている。今回1998/1999シーズンにおける患者報告数、学級閉鎖数およびインフルエンザウイルス分離数についてその経時的推移について報告する。なお、各情報の数値は1999年3月16日現在のものを使用した。
1)インフルエンザ様疾患の各定点あたりの患者報告数については図1に折れ線グラフで示した。患者報告数は1998年第48週(11/29〜12/5)頃から始まり、年内はゆるやかに増加していたが、1999年に入り急増し、第3週(1/17〜1/23)には今シーズン最高値(3,684人:定点あたり46.05人)に達した。その後やや減少していたが、第7週(2/14〜2/20)に再び増加し、翌第8週(2/21〜2/28)はやや減少に転じた。
2)インフルエンザによる学級閉鎖の閉鎖学級数については図1に縦棒グラフで示した。今シーズンは1998年12月4日に上尾市の小学校で初めて報告されたが、年内はあまり報告数は増加せず、1999年第4週(1/24〜1/31)から急増し、第7週に最高値(973学級)となり、その後減少に転じた。
3)インフルエンザウイルスの分離数についてはA香港型(分離数:121件)とB型(分離数:76件)に分けて図1に折れ線グラフで示した。A香港型については1998年12月2日採取の浦和市の48歳の患者から今シーズンはじめて分離され、年内はゆるやかに増加傾向を示し、1999年初頭に急増し、その後減少に転じた。B型については1998年12月14日採取の八潮市の9歳の患者から今シーズンはじめて分離されたが、その後年内はほとんど分離されず、1999年第4週頃より増加し、第8週頃から減少傾向を示した。
上記の3者の推移より、インフルエンザ様疾患の報告患者数の2峰性ピークのうち、最初のピーク時はA香港型、2番目のピーク時はB型の感染によるものが主流と思われる。また、学級閉鎖数の増加には、A香港型よりB型の方が大きな影響を与えている可能性が高いことが示唆された。これについては患者報告数の年齢区分をみると、2番目のピーク時は最初のピーク時に比べ、5〜14歳の占める割合が大きく、また、ウイルスが分離された患者の年齢で、5〜14歳の占める割合がA香港型が分離された患者では28%であるのに対し、B型が分離された患者では91%と高くなっており、B型の好発年齢が学童期であり、これが今シーズン学級閉鎖を引き起こしている大きな要因であると考えられた。
埼玉県衛生研究所疫学部
岸本 剛 鈴木 章 遠藤ひろみ
島田慎一 篠原美千代 内田和江 後藤 敦