ヒトと食肉から分離された志賀毒素産生性大腸菌(STEC)OX3:H21 の性状−秋田県

志賀毒素産生性大腸菌(STEC)OX3:H21は稀な血清型のSTECであるが、ベルギー、デンマークおよびフィンランドにおいて下痢患者やHUS患者から分離されている(abstr. VTEC'97:3rd International Symposium and Workshop on Shiga Toxin (Verocytotoxin)-Producing Escherichia coli Infections)。本月報に報告された国内におけるSTEC OX3:H21の分離例は、我々が給食従事者から分離した事例のみであった(本月報Vol.19、No.11、1998)が、最近これに加えて、我々は1998年11月に県内で市販されていたオーストラリア産牛肉から分離されたSTECの血清型がOX3:H21であることを確認した。

表1に示すように、2株のSTEC OX3:H21はいずれもstx-2遺伝子のみを保有し、eaeA遺伝子を保有しなかった。また、いずれもCT-SMAC分離平板には発育せず、Api20Eプロファイルは定型的な大腸菌であった。EC-1401株の血清型はStatens Serum Institutにおいて決定された。EC-1862株の血清型は、Statens Serum Institutから購入したOX3群参照株(E. coli C8-55:2531株)を抗原としてEwingらの方法に従い自家調製した免疫血清を使用し、試験管内定量凝集法により決定した。なお、市販群別用血清キットでは、2株ともにO6群血清に非常に弱い凝集がみられた。2株のXbaIおよびNotI PFGEパターンを次ページ図1に示した。2株のうち、EC-1401株のパターンがスメアとなったことから2株の起源の比較はできなかった。

今回、STEC OX3:H21が輸入食肉を介して国内に侵淫している事実が初めて確認され、今後家畜の保菌状況など国内における感染源の実態についても解明が必要と考えられる。一方、STEC OX3の群別用血清が市販されていないことから、国内における該菌感染の発生実態はほとんど明らかになっていない。本菌のスクリーニングにはstx遺伝子を指標とする方法が確実である。また、CTを含む分離培地は使用することができないことに留意する必要がある。

秋田県衛生科学研究所 八柳 潤 齊藤志保子

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