無菌性髄膜炎が疑われた患者からのアデノウイルス7型の分離−神奈川県

神奈川県域(横浜市、川崎市を除く)の無菌性髄膜炎は、1998年5月下旬から患者発生数が増加し、7月をピークとして流行がみられた。分離されたウイルスは表1のとおりエコーウイルス30型(E30)が大半を占めた(県域では1991年以来)が、その他にアデノウイルス7型(Ad7)が6例から分離された(表2)。

RD-18S細胞とHeLa細胞を用いてウイルス分離を行い、Adが分離された例についてはHEp-2細胞にて再度分離を試みたが、いずれも髄液検体からウイルスは分離されなかった。

No.1と2は弟から兄へ、No.3と4は兄から妹への家族内感染と思われる。No.3と6は住居が隣りであり、No.5は直線距離で約2kmであったこと、さらに、No.5と6はNo.3と年齢が同じ5歳であったことから、No.3と同じ保育園あるいは遊び友達であった可能性が考えられ、また、No.5と6の発病時期が近かったことなどから、No.3から感染したと推測される。No.1、2とNo.3、4とは発病時期や住居地が離れていることから関連性はないと考えられ、また、周辺へ感染が大きく拡がることもなかった。重症化例はなくいずれも軽快した。

Ad7の同定は市販(デンカ生研)の中和抗血清により行ったが、Ad3との交差反応はほとんどなく同定は容易であった。

いずれの症例も項部硬直が認められず、髄液中の細胞数が少なかったことや他の臨床症状を総合検討した結果、最終的に無菌性髄膜炎とは診断されなかった。

同時期の眼疾患患者やいわゆる”夏かぜ”患者検体からAd7型は分離されなかった。

神奈川県衛生研究所 斎藤隆行 今井光信
藤沢保健福祉事務所 河西悦子
藤沢市民病院小児科 瀧聞浄宏

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