香港におけるヒトインフルエンザA(H9N2)の2例について
1999年4月香港特別行政区(以下香港)で発生した、ヒトにおけるインフルエンザA(H9N2)(以下H9)の2症例について報告する。
症例1:4歳女児。湿疹および喘息のためベクロメサゾンの吸入を行っているという既往歴がある。1999年2月28日、発熱・咽頭痛・頭痛・嘔吐・食思不振があり、3月1日喘息の経過観察とあわせて入院。入院時体温38.9℃、咽頭発赤がみられたが、全身状態は良好。急性咽頭炎として解熱剤(アセトアミノフェン)・ベクロメサゾン吸入・抗生剤静注の投与を受け、3月8日退院。3月3日に採取された鼻咽腔吸引液から非典型的なA型インフルエンザが分離されたため、英国および米国にあるWHO協力センターに株を送付し、4月7日両センターでA(H9N2)と同定された。患児は外国旅行をしたことはないが、発症11日前に祖父宅で鶏に接触をしたことがある。この鶏は健康であった。家族には咽頭痛があった者がいるが、熱発者はいなかった。
症例2:13カ月女児。出生体重2.9kgで、体重増加不良のため小児科医で経過観察されていた。3月4日発熱と嘔吐があり、3月5日入院。入院時体温39.5℃、咽頭発赤があり、解熱剤・抗ヒスタミン剤・抗生剤静注の投与を受けた。患児は3月7日退院。3月5日に採取された鼻咽腔吸引液から同様にインフルエンザA(H9N2)が分離同定された。患児は外国旅行をしたことはなく、家禽類に接したこともない。家族親戚の一部に咽頭痛を訴えた者がいたが、熱発者はいなかった。
家族と患児周辺の人々に対して、面接および血液・咽頭スワブの採取などが行われた。健康教育に関する事項について、ホームページ(http://www.info.gov.hk/dh/index.htm)掲載、印刷物の配布などが行われた。
衛生署内に、公衆衛生担当医師・獣医師・国内外の微生物疫学専門家からなる調査グループが緊急に構成され、H9感染に関するヒト・動物類のサーベイランスの強化、ヒトへの感染経路・感染危険因子の調査など、今後の対策が協議された。
(Hong Kong Public Health & Epidemiology Bulletin、8、No.2、9、1999)