パセリに関連した赤痢の集団発生、1998年7〜8月−米国、カナダ
1998年8月、ミネソタ州保健当局はCDCに二つのレストランにおけるソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)感染の集団発生を報告した。二つの発生の分離菌株は非常に似たPFGEパターンをとり、一つのバンドが異なるだけであった。疫学調査により共通の感染源としてみじん切りの生パセリが疑われた。問い合わせにより7〜8月に全米とカナダで6つの類似の集団発生が確認され(カリフォルニア2、マサチューセッツ、フロリダ、オンタリオ、アルバータ各1)、これらのうちの5つの発生における分離菌株はミネソタでの2つの発生と同じPFGEパターンであった。さらなる調査によりこれらの集団発生の原因としてメキシコの農場から輸入されたパセリが示唆された。
ミネソタ:1998年8月17日、ミネソタ保健当局は同じレストランで食事をした2例の赤痢患者の報告を受けた。引き続いて、ソンネ赤痢菌が下痢症状のあるレストラン客43例から分離され、さらに167例の赤痢を疑う症状のある患者がみつかった。ケース・コントロール研究により、水、氷、ポテト、パセリ、トマトに疾患との関連性があったが、多変量解析を行うとパセリと氷が有意なものとして残った。
カリフォルニア:8月5日、ロサンゼルス郡保健当局は7月31日に同じレストランで食事をした2例の赤痢患者の届出を受けた。さらに6例のレストラン客患者からソンネ赤痢菌が分離され、3例の疑い例がみつかった。従業員には症状のあるものはなく、検便でもソンネ赤痢菌は陰性だった。調査によりみじん切りの生パセリを散らした料理の摂食が有意に発症と関連していた。
マサチューセッツ:8月11日、マサチューセッツ保健当局は7月30日のレストランでのランチパーティーでの喫食後下痢を発症した6例の報告を受けた。3例からソンネ赤痢菌が分離され、さらに3例の疑い例が見つかった。調査により、パセリを散らしたチキンサンドイッチとそれ以外のパセリをつかった料理と発症とが有意に関連していた。従業員からはソンネ赤痢菌は分離されなかった。
カナダ:オンタリオ州保健当局は、7月31日〜8月3日に行われた食品フェアに参加した3例の家族の赤痢患者の報告を受けた。検査室サーベイランスにより、さらにフェアの一つの模擬店か、あるいはそこに料理を供給しているレストランで食事をした32例の赤痢患者がみつかった。調査された20例全員がパセリを使用したスモークサーモンかパスタを食べていた。
その他の調査:上記以外に4つの、合計218例を巻き込むレストラン関連の集団発生がみつかり、いずれもパセリが関連していることがわかった。これらのうちの3つの集団発生(ミネソタ、カリフォルニア、アルバータ)の分離菌株はPFGEパターンが一致した。
追跡調査と環境調査:パセリの供給元を追跡したところ、メキシコのバハカリフォルニアの農場Aが7つの発生のうちの6つに、カリフォルニアの4つの農場が7つのうちの2〜4の発生に関与していたことが疑われた。農場Aの調査により、農場でパセリを冷やしたり、輸送用の氷を作成するのに使用していた水道水が塩素消毒されていなかったことが判明した。
細菌学的調査:ミネソタ州保健部の検査室は1995年来、ソンネ赤痢菌はルーチンにPFGE解析を行っており、今回の2つの発生が過去に見られたことのないパターンで、しかも2つが非常に似ていたことから、すぐにPulseNetを通してPFGEパターンを配布し、ミネソタおよびCDCで全7集団発生の株が共通のPFGEパターンをもつことが確認された。薬剤感受性パターンも同様であり、今回の対応のきっかけとなったものである。
(CDC、MMWR、48、No.14、285、1999)