イカ菓子が原因とみられるサルモネラ食中毒事例のパルスフィールドゲル電気泳動による解析−和歌山市
乾燥イカ菓子を原因食品とする「サルモネラによる食中毒について」(1999年4月9日付衛食第66号食品保健課長通知)に関連して、本市で流通していた当該製品30検体について細菌検査を実施した。その結果、16検体からSalmonellaが分離され、うち15検体(バリバリイカ、おやつちんみ、元祖おやつちんみ)からSalmonella Oranienburgが、5検体(おやつちんみ、元祖おやつちんみ)からSalmonella Chesterが分離された。
これらの菌株と、患者並びに健康者糞便から分離された両血清型菌株について、XbaIおよびBlnIを用いてDNAを切断後、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を実施し、パターンを比較した。S. OranienburgのPFGEパターン(図1)は、イカ菓子および患者からの分離株については同一であった。健康保菌者由来の2株のうち、1999年3月に分離された株(健康保菌者2、イカ菓子の喫食は不明)はイカ菓子および患者株と同一パターンを示したが、1998年7月に分離された株(健康保菌者1)は、XbaIおよびBlnIのいずれにおいても全く異なるパターンを示した。
S. ChesterのPFGEパターン(図2)は、おやつちんみから分離された2株においてextra bandが認められたものの、イカ菓子、患者および健康保菌者(1999年3月に分離、健康保菌者3、イカ菓子の喫食は不明)から分離された株は同一パターンを示した。
以上の結果から、本事例はイカ菓子を原因とする、S. OranienburgおよびS. Chesterが病因物質の広域集団食中毒である可能性が強く示唆される。
なお、本事例と同じ時期に患者の血液、関節炎症例の関節液および尿路感染症例の尿からもS. Oranienburgが分離されているが、詳細については調査中である。
和歌山市衛生研究所
森野吉晴 山下晃司 金澤祐子 上野美知 太田裕元
北口三知世 岩崎恵子 辻澤恵都子 旅田一衞