輸血によるマラリア感染、1996〜1998年−米国・ミズーリ州、ペンシルバニア州

マラリアは稀ではあるが重要な輸血の合併症である。1958〜1998年に米国において103例の輸血によるマラリアの報告がある。本稿では1996〜1998年にミズーリ州とペンシルバニア州においておこった3例の調査のまとめを報告する。

症例1(ミズーリ):Waldenstromマクログロブリン血症の70歳男性、1996年11月12日濃厚赤血球3パックを輸注された。11月27日発熱により入院し、血液塗沫標本にてPlasmodiaあるいはBabesiaを疑わせる赤血球内寄生虫が認められた。キニーネとクリンダマイシンによる治療にもかかわらず、呼吸不全、腎不全をきたし11月30日死亡した。海外渡航歴はなく、1996年に7単位の濃厚赤血球の輸注を受けた経験のみがあった。CDCは、熱帯熱マラリアであることを確認し、保存されていたすべての供血者血清で抗マラリア抗体を検査したところ、供血者の一人が陽性であった(熱帯熱マラリア原虫1:16,384、四日熱1:256、卵形1:256、三日熱1:64)。1997年3月に採取した本人の血液から熱帯熱マラリア原虫がわずかにみつかり、PCRで熱帯熱マラリア原虫DNAが検出された。供血者は供血時発熱はなかったが、1996年4月に西アフリカから移住しており、キニーネとドキシサイクリンによって治療された。

症例2(ミズーリ):消化管出血のため入院した85歳男性、1997年10月9日〜11日のあいだに5単位の濃厚赤血球輸注を受けた。11月1日に再出血と発熱で再入院し、末血から熱帯熱マラリア原虫がみつかった。キニーネとドキシサイクリンで治療されたが、頭部CTにて脳血管障害が示され、18日死亡した。海外渡航歴はなかった。保存供血者血清を検査したところ、1995年に西アフリカから移住してきた1例で抗体陽性であった。1997年11月に採取した血液からは原虫はみつからなかったが、PCRでDNAが検出され、キニーネとドキシサイクリンにより治療された。

症例3(ペンシルバニア):49歳男性、1998年1月15日股関節置換手術の際、4単位の濃厚赤血球輸注を受けた。2月19日、発熱、低血圧、腎不全で再入院し、末血塗沫にて熱帯熱マラリア原虫がみつかった。キニジン、ドキシサイクリン、交換輸血にて軽快した。海外渡航歴はなかった。保存供血者血清を検査したところ、1例で抗体上昇が見られた。この供血者は西アフリカ出身で、1996年に米国に移住していた。供血時の保存サンプルから熱帯熱マラリア原虫のDNAが検出された。

(CDC、 MMWR、 48、 No.12、 253、 1999)

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