宮崎県における紅斑熱の発生状況

R. montana(ATCC VR611)あるいはR. japonica(YH株)を抗原とした間接蛍光抗体法によって、当所で血清学的に確認した紅斑熱患者は1983年以降12名(表1)で、同期間におけるつつが虫病の患者数1,500名余りに比べて著しく少ない。また、これらの他に、押川(宮崎県内科医会誌、32号、41-46、1987)は1986年8月に野尻町で発症した73歳男性と63歳女性の2症例を報告している。

当所で確認した紅斑熱患者12名の年齢はいずれも40代以上で、60代以上が約7割を占めており、高齢者の多いことはつつが虫病と共通していた。また、感染機会としてはつつが虫病の場合と同様に各種作業やキノコ採取を目的とした山林への立ち入りが多く、他に、魚釣り等での河原への立ち入りや、農地での農作業、野原への立ち入りが感染の機会となっていた(表1)

紅斑熱の発生は4月〜10月にかけて見られた(図1、押川の報告を含む)。宮崎県のつつが虫病は11月をピークとして9月末〜3月にかけて発生している。9、10月にはつつが虫病を疑う患者中に紅斑熱患者が含まれる可能性もあり、特に急性期血清しか採取できない場合にはPCRや病原体分離による鑑別が重要と思われる。

紅斑熱患者の発生は1市5町で確認されているが、いずれもつつが虫病の発生地で、推定感染地から紅斑熱と予測することは困難で、実験室診断が必要である(図2)。また、宮崎県におけるつつが虫病の主要なベクターはタテツツガムシと推定されるが、残念ながら紅斑熱のベクターに関する充分な調査は行われていない。

宮崎県衛生環境研究所
山本正悟 木添和博 吉野修司

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