香港におけるエンテロウイルス71型による初めての死亡例

1999年5月、1保育園で手足口病の流行に関連して死に至った、香港で初めてのケースが報告された。香港保健省は1999年5月20日に香港内の1保育園から8名の手足口病の罹患の報告を受けた。その保育園は児童100名、2〜6歳を4クラスに分けて保育している。8名の罹患者のうち1名が死亡した。死亡した児の姉妹を含む他の7名は通常に回復した。

死亡した男児は2歳、38.5℃の発熱、鼻汁、咳、嘔吐と口腔内潰瘍が5月11日に出現、その後腹痛が増強、多呼吸とチアノーゼが出現し、14日に入院。易刺激性、傾眠と低血圧となり、蘇生処置にもかかわらず、全身状態は悪化し同日の晩に死亡した。

死後に得られた脳、便などの材料より、PCR法でエンテロウイルス71型(EV71)が陽性、さらにウイルス培養でもEV71が得られた。姉妹の咽頭ぬぐい液、直腸ぬぐい液からも同様にEV71が検出された。この2名から分離されたウイルスの塩基配列は、マレーシア、台湾、日本で検出されたものと同じグループに属していた(IASR編集委員会註:その後感染研ウイルス2部に分離ウイルスが分与され、詳細について比較検討中)。

保健省は同保育園を訪問、一般衛生状態に問題はないとの見解を示した。さらに個人の衛生状態、園内の換気などに注意すること、保護者には具合の悪い児は自宅にとどまらせ、早目に医療機関を受診するようアドバイスした。手足口病の情報をパンフレット、ポスターで園内に呈示し、エンテロウイルス感染についての説明会を園のスタッフや保護者に対し行った。最後の手足口病の発生は5月21日であり、その後2週間にわたり新患者の報告はされていない。

香港ではエンテロウイルスの動向を臨床および病原体サーベイランスによって持続的にモニターしている。手足口病のサーベイランスは、64の公立一般外来診療所と28の開業医の定点から、毎週保健省に患者数が報告される。病院からも、手足口病の入院患者数が定期的に報告される。病原体サーベイランスは、流行期間中に病院等から保健省所属のウイルス研究室に送付された検体について行われている。1998年に確認されたEV71は60例であり、そのうち髄膜炎1、脳炎2、脳脊髄炎2例の合併症がみられたが、この60例はすべて無事に回復している。1999年は6月12日の時点で確認されたEV71は、この死亡例を含めて12例である。

香港における手足口病の大部分は軽症であり、今回の死亡例は散発的な稀な症例であると考えられる。しかし医療・保健関係者は警戒を続け、人々に対して必要な注意を与える必要がある。

(Hong Kong Public Health & Epidemiology Bulletin 8、No.3、21、1999)

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