エンテロウイルス71型の分離、1999年−宮崎県

エンテロウイルス71型(EV71)はコクサッキーA16型(CA16)、コクサッキーA10型とともに夏季に主として幼児に発生する手足口病の原因ウイルスとして知られ、とくにEV71は無菌性髄膜炎や脳炎などの中枢神経系の合併症を伴うことがあり、注意を要する。

本県では1998年10月〜12月の冬季に手足口病の患者からEV71が8株、CA16が5株分離されており、このことを含め1998年の全国の手足口病の原因ウイルスはCA16が主体であったことから、1999年の手足口病からの分離ウイルスが注目されていた。

1999年における宮崎県の手足口病の患者報告数は、まず14週に県北の延岡地区で定点当たりの報告数が0.78と微増し、その後15週に3.50、16週には4.50と急激に増加した。17週になると延岡地区の南部の日向地区、高鍋地区もそれぞれ1.25、1.75と増加し始めた。21週に入ると県中央の宮崎地区も増加に転じ、その後23週から県南、県西へと県全体に拡大流行した。県全体では28週に定点当たりの患者数が6.97とピークに達した(図)。患者年齢は、1歳が全体の28%、2歳が21%を占めた。今回の流行と1995年の流行を比較すると、30〜32週の患者報告数は今シーズンが多いが、累計でみると1995年の約8割程度である。

1999年3月〜7月下旬にかけて手足口病の患者32名の検体が搬入され、うち8名からEV71が分離され、他の1名からCA16が分離された。今のところ本県の手足口病の原因ウイルスはEV71が優位である。また、ヘルパンギーナの患者9名中2名からもEV71が分離されているが、ヘルパンギーナの場合には他にCA2が1株、CA6が2株、ECHO6が1株分離されており、原因となる型が多彩であった。

EV71の分離された手足口病の患者の年齢はすべて6歳以下であり、0、1、3歳児が各2名で、性別は男2名、女6名であった。手足口病の患者のうち無菌性髄膜炎を併発していた患者は3名で、うち1名からEV71が分離されたが、その患者の予後は良好であった。これまで本県では1990年〜1998年までに89株のEV71が分離されているが、すべて手足口病の患者からの分離であり、無菌性髄膜炎を併発した患者からの分離は初めてである。

EV71の分離された材料はすべて咽頭ぬぐい液で、髄液からは分離されなかった。分離にはVero細胞、MA-104細胞、HeLa細胞、CaCo-2細胞を使用している。分離された10株はいずれもVero細胞、MA-104細胞そしてCaCo-2細胞でCPE を認めたが、Vero細胞・MA-104細胞のCPEはCaCo-2に比べて細胞全体に広がりにくい傾向があるため、中和反応はCaCo-2細胞を使用している。抗血清は福岡県保健環境研究所から分与された抗EV71(FS71/93)血清・抗CA16(FS25/95)血清を使用したが、分離された10株は抗血清に対し難中和性は認めなかった。

EV71による髄膜炎は予後良好の国内報告が多いが、1997年マレーシアサラワク州、大阪市、1998年台湾においてEV71による中枢神経疾患が原因と考えられた死亡例が報告されていることから今後の動向に注意が必要である。

宮崎県衛生環境研究所
ウイルス科 木添和博 吉野修司 山本正悟
企画管理課 岩城詩子

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