トルコ旅行者のパラチフスB菌感染症、1999年−ヨーロッパ諸国

トルコの南西部Antalya地方を訪れた旅行者の間にパラチフス患者が多発している。分離報告が最も多いのは、Salmonella Paratyphi Bファージ型Tauntonである。1999年9月9日現在、患者総数は201例で、その内訳はスウェーデンが66例、ノルウェーが51例、デンマークが34例、ドイツが21例、フィンランドが19例、英国が10例となっている。すべての症例がAlanyaの町あるいはその近辺に滞在したことがわかっている。症例は7月26日〜8月22日の4週間にわたり増え続け、発症日は7月13日〜8月30日に分布している。症例の確認に時間を要する場合もあるため、これで伝播が終息したと結論するにはまだ時期尚早であろう。死亡者はいないが、情報収集が可能な症例のうち80%以上が入院を要した。

Antalya地方の旅行者収容人数は212,000人程度で、そのうちAlanyaには100,000人が訪れる。Antalya空港から入国した外国人旅行者は7月が230,000人、8月が290,000人で、その多くがAlanyaに滞在したと考えられる。ヨーロッパ各国からの月平均渡航者数はそれぞれ、ドイツから98,000人、イギリスが13,000人、フランスとオランダから11,000人、スウェーデン、オーストリア、ベルギーから10,000人、ノルウェー9,000人、デンマーク7,000人、フィンランドから3,000人であり、東ヨーロッパ各国、たとえばロシア、ウクライナ、ポーランドなどから7,000人あまりとなっている。

感染源や感染物質はいまだ不明のままで、20〜29歳の若年成人が最も影響を受けているが、患者年齢は6歳から69歳まで分布している。Alanya公衆衛生局を支援しているEU派遣団は、この自治体の公的水道水が集団発生の原因とは考えにくいと発表している。この感染症に関連した特異な暴露がAlanya市内で起こったかどうかは、現在コントロールスタディが進行中である。

潜伏期は1〜10日で、臨床家はトルコから帰国した患者が下痢、菌血症、高熱を呈した場合、パラチフスを疑って微生物学的検査を行うよう勧告している。

IASR編集委員会註:わが国の感染症新法では、パラチフスはSalmonella Paratyphi Aの感染によって起こる全身性感染症と定義されており、Salmonella Paratyphi Bによる感染はサルモネラ症として取り扱われている。

(Eurosurveillance Weekly、No.37、1999)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る