<速報> 秋田県における腸炎ビブリオ散発患者発生状況速報(1999年7月11日〜8月28日)
秋田県においても、腸炎ビブリオ血清型O3:K6による感染者数は年ごとに異常なペース で増加している。1999年は秋田県内の大館市、秋田市、本荘市にある3カ所の医療機関 を観測定点に定め、腸炎ビブリオの分離状況を監視しているので、その途中経過を報告 する。
図1に7月11日〜8月28日までに3カ所の定点から報告された週別散発患者発生状況の集計を原因菌の血清型ごとにグラフで示した。今年の腸炎ビブリオ感染初発患者は7月16日に秋田市の定点において確認され、分離株の血清型はO3:K6であった。患者の報告数は8月中旬にかけて急増し、8月15日〜21日の週に38名に達した。なお、8月22日〜28日の週の報告数には大館市からの報告が含まれていないことから、8月15日〜21日の週が患者発生報告のピークかどうかは現時点で判断できない。報告された患者から分離された腸炎ビブリオ103株の血清型の内訳を表1に示した。O3:K6は分離株の約85%を占め、分離株の主流を占めていることは前年までと同様であった。また、現在、全国的にも動向が注目されているO4:K68が秋田県にも浸淫していることが初めて確認された。今後、O4:K68の分子疫学的性状について検討が必要と考えられる。
今年度観測定点とした3カ所の医療機関のうち、秋田市と大館市の定点では昨年1年間に確認された腸炎ビブリオ感染者はいずれも10人程度であったのに対して、今年は既にそれぞれ32名と27名の感染者が確認されている。このように、今年の腸炎ビブリオ感染者の発生数は昨年を大幅に超えることは確実と考えられる。
腸炎ビブリオの感染源調査として各種食品、海水などから菌の分離を試みているが、昨年O3:K6が分離された市販ボイルホタテからは、今年はO3:K6が分離されておらず、O3:K6に汚染された食品の特定には現時点では成功していない。また、秋田県沿岸の海水からも、O3:K6を含む、TDHまたはTRH遺伝子を保有する腸炎ビブリオは分離されていない。今後の予防対策構築のためにも感染源の特定が急務であると考えられる。
秋田県衛生科学研究所
八柳 潤 斉藤志保子 伊藤 功 佐藤宏康 宮島嘉道