Salmonella Typhimurium食中毒による死亡例−宮崎県
1999年9月、宮崎県において、Salmonella Typhimurium(以下ST)による家族内食中毒で2歳の幼児が死亡するという事例が発生した。本患者は9月3日23時頃発症し、翌9月4日に小児科を受診、対処療法として補液を受けたが、入院施設がないため15時頃帰宅した。主な症状は水様性下痢、腹痛、嘔吐、39℃の発熱であった。9月6日早朝3時、症状が急変し危篤状態となり病院へ運ばれたが、6時11分死亡した。9月8日、宮崎医科大学で行われた死体解剖による剖診で、腸間膜出血、腸管リンパ節肥大腫脹、胃粘膜下出血、十二指腸間膜出血が見られ、かつ患者便よりSTが検出されていたことから、急性腸炎に基づくエンドトキシンショック死が疑われると判断されたが、最終診断は現在調査中である。家族についても、7歳の兄が下痢、腹痛、嘔吐症状を呈し入院したのを始め、父、母も下痢、腹痛を訴えた。
菌の検索については、死亡した患者が9月4日に受診した小児科で採取された便より民間検査施設で分離されたサルモネラが当衛生環境研究所へ搬入され、STと同定された。家族3名についても9月6〜7日採取便からサルモネラが分離され、STと同定された。
原因食品の調査は、家族4名の共通食品が8月31日〜9月3日までの夕食であったため、家庭に残っていた食品、捨てられていた残飯、およびそれらの食品を購入したスーパーで収去した各種既製品についてサルモネラの検索を保健所にて実施した。その結果、9月2日の夕食で翌3日にビニール袋に入れ捨てられていたビーフカレーからSTが検出された(9月7日採取)。しかし調理直後のビーフカレーのサルモネラ汚染は考え難く、二次的な汚染が考えられる。喫食した食品や残飯が少なく、原因食品は不明であるが、共通食品が夕食のみであること、9月3日の夜から症状が出始めていること、9月2日の残飯(ビーフカレー)からサルモネラが検出されたこと、およびサルモネラの潜伏時間(8〜48時間)を考え合わせると、9月2日の夕食が最も疑わしいと思われた。
検出されたST 5株(死亡患者およびその家族3名より計4株、カレーの残飯から1株)について、薬剤感受性およびパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を行った。その結果、5株すべて、使用12薬剤(アンピシリン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、カナマイシン、セフォタキシム、クロラムフェニコール、トリメトプリム、ゲンタマイシン、ナリジクス酸、ホスホマイシンおよびST合剤)に対し感受性であった。XbaI、BlnIによるDNA切断後のPFGEパターンは、5株とも同一パターンを示した(図1)。
宮崎県衛生環境研究所 河野喜美子 山田 亨 八木利喬
宮崎県日向保健所衛生環境課衛生係
宮崎県延岡保健所広域指導検査課検査係