ヨーロッパにおける妊娠期間中のHIV検査

 デンマーク:1997年までは中絶予定者を含むすべての妊婦に公費で検査が実施されていたが、HIV感染のリスクのない妊婦におけるHIV陽性者は皆無であったことから、対費用効果が認められず、廃止となった。国の基準に見合うHIV感染リスクのある妊婦に対しては検査が実施されるべきとされている。

 フィンランド:妊婦に対するHIV検査は必須とされているものの、検査自体は任意である。妊婦の98%は検査を受けることを了承しており(年間58,000件の検査に相当)、陽性者はこのうち5〜7人である。

 ドイツ:すべての妊婦にHIV検査を受けるよう公的に勧告されており、全員ではないがほとんどの妊婦が検査を受けている。

 ルクセンブルグ:妊婦に対するHIV検査を医師に義務づけていないが、妊娠早期に産科医により自主的に無料で検査が実施されている。この非義務的検査方針は1992年に国立エイズ委員会の提唱に政府が賛同し、導入したものである。

 オランダ:検査対象が限定されている現状について、対象を拡大するか否か議論が進行中である。現在アムステルダムの2病院と3産院で検査が行われているが、陽性率は1%以下である。

 ポルトガル:1993年よりすべての妊婦に検査が提供されており、1998年からは妊娠前にカウンセリングを受ける人にも提供されている。

 スペイン:19ある自治区のうち11で、すべての妊婦に、保健所で行われる基本的検査の中でHIV検査を行うことを宣言している。子どもを産みたいと思う妊娠可能な女性にはすべてリスク行動と予防方法の情報を提供し、リスク行動のある女性、あるいはリスク行動のあった妊娠中の女性には診断検査が提供されることになる。保健所の中にはリスクの有無を問わずすべての妊婦に検査を提供しているところもあろう。すべての検査はインフォームドコンセントを得て行われ、前後のカウンセリングと連結することになってる。

 スウェーデン:1987年に国は妊婦はHIV検査を受けるべきであると勧告し、約2年間で21郡のうち4郡で選択的スクリーニング検査が実施されている。スウェーデンでは毎年10〜12万人の子どもが出生し、約95%の女性が検査を受けていると報告されている。1998年まででは134人のHIV感染女性が確認され、その57%はアフリカの流行地出身者であった。

 英国:英国政府は最近、母児感染によりHIV感染する子どもの数を2002年末までに80%減らすことを国家としての目標とすることを発表した。Health Service Circularはこの発表をうけて、すべての女性は妊娠中管理の一環としてHIV検査を受けるべきであり、セット検査の実施をそれぞれ2000年12月までに医療機関の50%に、2002年12月までに90%に拡大する方針である。また、検査を受けるすべての女性は口頭での同意を前提とし、この検査が感染者の発見に必要である旨の説明を受ける。この戦略の当面の課題はHIV陽性妊婦の80%の感染を診断し、様々なプログラムに取り込んで直接的に産科医の監視下に置き報告させることである。目下最新の研究によると、種々のプログラムで把握されているHIV感染者からの出産は300程度で、その3分の2はロンドンで発生している。現在のところHIV陽性妊婦で出産時に感染が判明している者は30%程度である。

(Eurosurveillance Weekly No.34、1999)

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