味付煮鶏卵とうずら卵を汚染したSalmonella Hadarによる食中毒事例−埼玉県
1999(平成11)年5月14日、下痢等の食中毒症状を呈した患者2名を診療した旨、医療機関から保健所に届け出があった。調査の結果、共通食品は5月8〜9日M町で開催されたポピーまつりで販売された味付け煮鶏卵および味付け煮うずら卵と判明した。これらを喫食した60名中49名が9日〜14日にかけて発症し、患者の主要症状は下痢45名(92%)、発熱27名(55%)、腹痛23名(47%)で、潜伏時間は平均26時間であった。細菌学的検査の結果、患者便、鶏卵とうずら卵をゆでた鍋のふきとり材料、およびうずら卵を運搬したケース内に残っていたうずら卵の殻から11株のSalmonella Hadarを分離した。
分離菌株の薬剤感受性試験(CP、SM、TC、KM、ABPC、NA、OFLX、CPFX、NFLX、FOM、SXT)の成績は11菌株すべてSM、TC、KMおよびABPCに耐性であった。またパルスフィールド・ゲル電気泳動法による解析の結果を図1に示した。BlnIおよびXbaIによる切断パターンは、Lane 1〜 3、 5〜 7の株をはじめ、ポピーまつり由来の11株がすべて一致した。なお、対照株として切断した1991年食中毒由来株(Lane 4、8)のパターンは、2種類の制限酵素ともに、ポピーまつり株とは異なった。
以上のこと、ならびに調理工程から、S. Hadarに汚染されたうずら卵から人あるいは調理器具を介して加熱調理後の味付け鶏卵およびうずら卵が二次汚染され、さらに室温に一晩放置されたことにより、本事件の発生に至ったと推定された。
埼玉県衛生研究所
大塚佳代子 斎藤章暢 小野一晃 濱田佳子 正木宏幸