百日咳に対するエリスロマイシンの予防的投与後の肥厚性幽門狭窄症−米国
1999年2月、テネシー州ノックスビルのA病院で新生児6人が百日咳と診断された。A病院の医療従事者が感染源として疑われ、1999年2月にA病院で生まれた新生児を対象にエリスロマイシン(EM)を予防的に投与した。同年3月地域の小児外科医が、2週間で7例の肥厚性幽門狭窄症(IHPS)を経験し、異変に気付いた。その7例のIHPSは、全例2月にA病院で生まれ、百日咳の予防のためにEMが投与されていた。
テネシー州保健局とCDCは、EMの使用とIHPSの集団発生との関連につき調査した。地域のIHPSの発生率は1999年2月がピーク(1,000出生に対しIHPS32.3例)で、1997〜1998年間の地域でのIHPS発生率に比べ約7倍高かった。今回の7症例と、地域でそれ以前の15カ月に発生したIHPS40例と、臨床的な特徴を比較検討したところ、今回の症例はIHPS発症時の日齢が若く(平均25.6日対35.4日)、IHPSの家族歴が少なかった(0%対18%)。EMの投与歴は過去の症例では1例もなかった。
EM投与とIHPSとの関連を検証するため、1999年1〜2月に生まれた282新生児を対象に、後ろ向きコホート研究を行った。282人中157人(56%)がEMを投与されていた。EMを投与されていた群157人のうち7例がIHPSを発症したのに対し、EMを投与されていなかった群125人ではIHPSはなかった。EMの投与開始時期の検討では、EMを投与されていたがIHPSを発症しなかった児が1〜53日齢(中央値13日齢、平均14.1日齢)に対し、今回の7症例は2〜17日齢(中央値5日齢、平均9.3日齢)であった。
米国でのIHPSの発生率は、1,000出生に対し1〜3例で、男児は女児の4〜5倍多い。IHPSの幽門筋肥厚は出生後におこると推察されている。IHPSとEM投与の関連を示唆する症例は1976年に初めて報告された。その後はEMを投与されていた母親の母乳を与えられた新生児のIHPS症例が1例あるだけであった。
今回の報告は、IHPSの発生についてEMが一因であることを示し、新生児のEM投与に関して慎重な検討を促している。
(CDC、MMWR、48、No.49、1117、1999)