飼育牛からの感染が疑われた腸管出血性大腸菌O26感染散発事例−宮城県
1999年6月、医療機関から下痢・発熱の症状で受診した2歳男児の便から腸管出血性大腸菌O26:H11(VT1産生)が検出されたとの届け出がなされた。患児の家族の検便とふきとり材料および飼育牛(5頭)糞便についてO26の検査を行い、飼育している子牛2頭からO26が検出された。患児由来A株と子牛由来のB-1、B-2株について生化学性状試験、薬剤感受性試験およびDNAのパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)分析法で比較検討した。3株は乳糖非分解性であり、その他の性状および薬剤感受性スペクトルも一致した。また、3株と同地域内で同時期に発生した2件のO26感染事例(C、D)から分離された2株とをXbaIを用いたPFGE解析で比較した結果、患児由来株(レーン3)のPFGEパターンと子牛由来B-1、B-2株のPFGEパターンは一致していた。一方、他の散発事例由来株(レーン4、5)とは明らかに異なっていた(図)。これらのことから患児由来株と子牛由来株は同一菌種と断定した。また、家族からの聞き取り調査によると、患児は牛舎周辺で遊ぶ機会が多かったことから、今回の感染は飼育していた子牛との接触によるものと推定された。
宮城県保健環境センター微生物部 齋藤紀行 伊藤友美 畠山 敬 秋山和夫 白石廣行