The Topic of This Month Vol.21No.2(No.240)
1991〜1999年に検出されたアデノウイルスの血清型を年別に表1に示した(1990年以前は本月報Vol.16、No.5参照)。1995〜1999年の最近5年間についてみると、総検出数は10,010で(2000年1月26日現在報告数)、1型〜41型まで17の血清型、34型と35型の中間型の34/35型、市販のELISAキットによる検出のため40型と41型の区別ができていない40/41型とが報告された。最も検出数が多かったのは3型で、以下2型、1型、7型、5型、19型、8型、6型、40/41型、4型、37型、11型の順で多く、その他の型は稀であった。1998年の3型の検出数(1,421)は過去最高数であった1987年(932)を上回った。4型は流行性角結膜炎および咽頭結膜熱の病原で、1991〜1992年に増加したが、1993年以降の検出は少ない。稀であった31型は胃腸炎患者から、35型は出血性膀胱炎患者からの検出が報告されている(本月報Vol.18、No.2およびVol.19、No.2参照)。
アデノウイルスは主要症状を反映して上気道炎患者の鼻咽喉材料、角結膜炎患者の眼ぬぐい液、胃腸炎患者の便からの検出が大部分を占める(本月報Vol.15、No.5参照)。1995〜1999年の検出例について鼻咽喉材料、眼ぬぐい液および便からの検出数をみると(表1)、B群とC群は主として鼻咽喉材料、D群は大部分が眼ぬぐい液、F群は全例が便から検出されている。B群の11型はその例外で、出血性膀胱炎の起因ウイルスであるため尿からの検出が多く、表に示した材料からの検出は少ない。
図1に群別に主な血清型の月別検出数の推移を示した。B群の3型は咽頭結膜熱の病原であり、1998年7月をピークに大きく増加した。同じくB群の7型は1995年から日本に再出現し(本月報Vol.17、No. 5 & Vol.18、No.4参照)、1996〜1998年に増加して肺炎等の重症例・死亡例が発生したため注目されたが(本月報Vol.19、No.7、155ページ参照)、1999年には減少した。7型も検出数の多かった1997年と1998年は6〜7月にピークがみられた。C群の1、2、5型は毎年コンスタントに検出されているが、季節性ははっきりしない。D群も季節性は明瞭ではないが、夏から秋にかけて幅広く検出が増加している。8型と37型は1995年〜1996年前半、19型は1996年後半〜1998年にかけて検出数が多く、角結膜炎の起因アデノウイルスの血清型が1996年7月を境に交替していることがわかる。F群は検出数のやや多かった1997年および1999年には11〜12月にかけて増加している。
図2に1995〜1999年に報告された小児科定点当たり咽頭結膜熱患者数(1999年第13週までは眼科定点からの報告も含む)と眼科定点当たり流行性角結膜炎の患者数の推移を示した。咽頭結膜熱患者発生は毎年夏にピークがみられ(1990〜1994年は本月報Vol.16、No.5参照)、この5年間は図1に示したB群の検出数の推移と連動している。特に1998年の患者増加は上記の病原体検出データより3型の流行を反映していると考えられる。流行性角結膜炎患者は通年的に発生しているが、第3四半期を中心に幅広い山を示し、図1のD群検出数と同様のパターンで推移している。
アデノウイルスの主要症状のうち、上気道炎と胃腸炎は主に小児にみられ、角結膜炎は成人に多い(本月報Vol.15、No.5 & Vol.16 、No.5参照)。図3に1995〜1999年に各群で最も検出数が多かった3型(B群)、2型(C群)、19型(D群)、40/41型(F群)を典型例として検出例の年齢分布を示した。3型は4歳をピークに、2型は1歳をピークに、40/41型は0歳をピークに小児からの検出が多く、これとは対照的に19型が検出された患者は成人が多かった。3型は30歳代にもう一つの小さなピークがみられるが、成人は結膜炎患者からの検出が多い。