群馬県における1999/2000シーズンのインフルエンザの動向(2月9日現在)

本県の感染症発生動向調査におけるインフルエンザ患者数は1999(平成11)年51週から増加し始めたことから当研究所では本疾患に対するウイルス検査体制を強化した。患者はその後急増し、2000年2月上旬(第5週)には本疾患患者の報告は40.97人/定点となっている。今シーズンのウイルス分離状況(中間報告)を以下に報告する。

ウイルス分離はMDCK細胞を用い、同定は定法に従った。定点等から得られた146件(検査中を含む)の検査を行ったところ、A(H1N1)型が26株、A(H3N2)型が19株分離されている。A(H1N1)型は主に若年層(1〜9歳)から、A(H3N2)型は4歳以下を中心とした年齢層から分離されている。ウイルス分離された患者の初診時の主な症状は、発熱(38℃以上)、上気道炎、筋肉痛、関節痛等であったが、下気道炎、けいれん、筋肉麻痺等を併発している患者もみられた。

上記症例中、特筆すべき症例を以下に述べる。患者は72歳(男)で、発熱、筋肉痛、脱水を伴い入院となった。入院時臨床検査データは、WBC 12,400/μl、 CRP 15.8mg/dl、 GOT 376IU/l、 GPT 153IU/l、 LDH 1,426IU/l、 CPK 17,550IU/l、 BUN 121mg/dl、クレアチニン 1.7mg/dl、尿中ミオグロビン 3,000ng/ml以上であった。筋酵素の著明な逸脱と筋肉麻痺などの臨床症状から横紋筋融解症が疑われた。幸いなことに、患者の経過は順調で10日後に検査所見も改善された。この患者の咽頭ぬぐい液からA(H3N2)型が分離された。このように、インフルエンザA型はまれではあるが、成人に横紋筋融解症などの筋肉系の合併症を引き起こすことがある(JAMA, 1980; 243, 461-462)。現在、他にこのような症状を示した数名の患者のウイルス学的検索を行っている。

また、学校等および福祉施設の集団発生事例19事例(検査中を含む)についてウイルス検査を行ったところ、9事例(幼稚園、小学校)からA(H1N1)型が分離され、2事例(中学校、福祉施設)からA(H3N2)型が分離された。定点および集団事例からの検体採取日別ウイルス分離状況を図1に示した。さらに1998(平成11)年度に実施した本県住民のインフルエンザワクチン株に対する感受性調査結果を図2に示した。A(H1N1)型およびB型のHI抗体保有率(抗体価1:40以上)が全年齢層において低いため、今後のインフルエンザの動向にはさらに注意が必要であろう。

群馬県衛生環境研究所
塩原正枝 木村博一 中村雄策 赤見正行 井上ますお 大月邦夫
前橋赤十字病院内科 中村保子
前橋赤十字病院小児科 深澤俊之

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