東京都内で採取されたコロモジラミの殺虫剤感受性の現状

近年、わが国を含む先進諸国において、コロモジラミとアタマジラミが、それぞれ、ホームレスと子供の間に広く発生している。WHOは、両シラミ種の殺虫剤抵抗性発達により、近い将来、薬剤による駆除が困難になると警告しており、わが国においてもこれらシラミ種の殺虫剤感受性の実態解明は緊急課題となっている。そこで、我々は1999年5月〜2000年1月に東京都豊島区内でホームレス5名と独居老人1名より採取したコロモジラミについて、国内で唯一認可されているシラミ駆除医薬品の有効殺虫成分であるピレスロイド系殺虫剤のフェノトリン、これと同系のペルメトリン、戦後の一時期シラミの駆除剤として用いられ抵抗性の発達が報告されたDDTに対する殺虫剤感受性を調べた。

殺虫試験は濾紙接触法により24時間後の生残を観察することにより行った。被験者各人から採取されたコロモジラミ数とフェノトリン殺虫試験の結果は、それぞれ、に示す。殺虫剤感受性の対照系統としては1953年に採取され感染研で継代されているコロモジラミ(NIID系統)を用いた。これら6名から採取されたコロモジラミのフェノトリンに対する50%致死濃度(LC50値)は10〜30mg/m2で、いずれもNIID系統のLC50値(40〜70mg/m2)と同等か、やや高い値を示し、その評価は感受性であった。ペルメトリンに関しては、1人のホームレス由来のシラミのLC50値が8mg/m2、独居老人由来のシラミでは4mg/m2で、明らかに対照系統(17mg/m2)より小さい値を示し、より高い感受性を示した。DDTに関しては、NIID系統(1.8g/m2)に対して、1人のホームレス由来のシラミでは高い感受性(0.3g/m2)を、独居老人由来のシラミではほぼこれに匹敵する感受性(1.5g/m2)であった。

このように、今回の都内で採取されたコロモジラミは、現在使用されている唯一のシラミ駆除医薬品の有効殺虫成分に対しては感受性が高く、薬剤抵抗性の発達は認められなかった。しかし、現状ではわが国におけるコロモジラミ症、アタマジラミ症はともに増加傾向にあることから、今後も継続的な薬剤感受性の調査が必要である。とくに、アタマジラミの駆除剤に対する感受性に関しては、現在その実態が全く不明であることから、早急な確認が求められる。

国立感染症研究所昆虫医科学部 冨田隆史 高橋正和 小林睦生 安居院宣昭
日本環境衛生センター環境生物部 三原 實
東京都豊島区保健所 矢口 昇
東京都豊島区中央保健福祉センター 関なおみ
前豊島区中央保健福祉センター 牧上久仁子

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