1998年ツツガムシ病・紅斑熱様患者集計報告

衛生微生物技術協議会検査情報委員会
つつが虫病小委員会

1998年のツツガムシ病・紅斑熱様患者発生は26機関より584報告された(表1)。このうち確定されたのは430(血清診断395、臨床診断35、表5参照)で、13は紅斑熱患者であった。1997年の患者発生はツツガムシ病456、紅斑熱24であったことから、1998年はツツガムシ病、紅斑熱ともにやや減少した。以下調査票にしたがって、ツツガムシ病患者および紅斑熱患者発生状況について解析した。

 1)ツツガムシ病・紅斑熱患者の地域別・月別発生状況:ツツガムシ病患者417、紅斑熱患者13について地域別・月別発生状況をみた(表2)。ツツガムシ病患者発生を県別にみると、1997年は鹿児島県が最も多く、次いで千葉、宮崎、大分、秋田の各県の順であったが、1998年は鹿児島県が最も多く、次いで宮崎、千葉、秋田の各県となっており、患者発生は千葉、大分両県で減少した。一方、増加した県は宮崎のほか山形、熊本であった。月別発生状況をみると例年のように東北、北陸では5月に、関東以西では11月にピークがみられた。紅斑熱患者の発生は千葉、島根、高知、宮崎、鹿児島の各県でみられた。宮崎県は1997年は発生がなかったが、1998年は2名の患者があった。その他の地域での発生状況をみると、鹿児島、千葉および高知各県では1997年に比べ患者数はそれぞれ8→1に、6→3に、7→4に減少したが、島根県では1997年同様3であった。患者の月別発生状況をみると、ツツガムシ病の少ない7〜8月がピークとなっている。

 2)感染推定場所・作業内容:ツツガムシ病・紅斑熱とも山地での感染が半数を占め、次いで平地が多い。また、感染時の作業では両疾患とも農作業が最も多く、次いでツツガムシ病では森林作業となっている。紅斑熱は例数が少ないが森林作業およびレジャーでの感染が報告されている。また、ツツガムシ病では患者の1割が山菜・山芋等の採取時に感染しているのが注目される(表3)。

 3)性別・年齢別発生状況:ツツガムシ病、紅斑熱患者ともに発生に性差はなく、年齢は60歳以上が多い。これは農作業などの従事者の年齢を反映しているものと思われる(表4)。

 4)診断法:血清検査陽性395と診断・届け出35の計 430を確定患者とした。紅斑熱は1例臨床診断を除き全例がIF(免疫蛍光法)で診断されている。また、両疾患で保留が113あるが、多くは単独血清のために抗体価の上昇が確認できなかった例である(表5)。

追加:集計後に福島県から47名のツツガムシ病・紅斑熱様患者個票が送付された。このうち血清診断で確認された例は26(陽性25、陰性1)で、残りの21は血清診断で確認されなかったが臨床診断により患者として届けられた。患者発生数は1997年に比し2倍近く増加した。また、1997年は10〜11月に患者発生のピークがあったが、1998年は患者の半数は4〜6月に発生している。

付記:感染症新法で(日本)紅斑熱はツツガムシ病とともに4類の全数届出感染症に指定された。4類感染症は届け出票が指定されているが、つつが虫病小委員会ではツツガムシ病および紅斑熱患者の情報を得るために、当面、現在の個票を引き続き利用したいと考えています。地方衛生研究所の皆様のご協力をお願いします。

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