創傷性ボツリヌス症−スイス

1999年の最終週から4例の創傷性ボツリヌス症患者がスイスの北東部(ドイツ語圏)で発生している。4例とも注射薬物濫用者で、血清中からボツリヌス毒素は検出されなかったが、このうち3人の皮下膿瘍からClostridium botulinumが検出された。分離された菌はいずれも毒素産生菌で、毒素型別のためPHLS食品安全微生物研究所に送られた。これらの症例を加えるとスイスでは1998年9月から創傷性ボツリヌス症は9例になる。すべての患者は北東部の注射薬物濫用者である。初めの5例は微生物学的には確定されておらず、皮下膿瘍からは毒素非産生性のC. sporogenesが分離されていた。

ヘロインの静注よりも皮下注射がこの感染症の発生に関係があると考えられ、膿瘍からはC. perfringensC. botulinumC. baratiiC. sporogenes等が分離される。臨床的特徴は古典的ボツリヌス症とは異なるが、中には長期間の人工呼吸器を要する例もある。2人の患者は初診から1週間経過しており、通常効果は期待されないが、多価抗毒素(抗−A、B、E)で治療され、治癒した。

Enter-Netの参加者からの報告はこの期間中にはなかった。1999年にEU諸国で出版されたボツリヌスに関するレビューによると、1988〜1999年には創傷性ボツリヌス症はイタリアで1例報告されたのみであった。1979年からイタリアでは3例の確診例と、1例の臨床診断例(すべて男性)が報告されている。これらすべての感染例は職場での感染である(建設現場や農業など)。1997年にノルウェーで見られた3例はいずれも注射薬物濫用者であった。

(Eurosurveillance Weekly、 No.5、 2000)

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