リステリア症集団発生−フランス

フランスではヒトリステリア症のサーベイランスは、内科医からの任意の届け出と、医療研究機関からパスツール研究所のリステリアセンターへのヒトから分離されたListeria monocytogenesの送付とによる。

1999年12月29日、2カ月間に4例のリステリア症が発生したため、リステリアセンターはリステリア対策班を結成した。分離されたL. monocytogenesは血清型、ファージ型、DNAパターンとも一致していた。その次の週にはさらに2例が診断された。これらの症例は10月18日〜12月24日までの間にフランス国内の6つの異なる医療機関から報告されていた。5例は成人で、そのうち4例は免疫不全の状態であり、1例はこの感染のため早期産となった未熟児であった。この新生児と免疫不全の成人1人が死亡した。

これらの感染を媒介したのはリレット(rillettes)とよばれるハム肉と脂でつくられた食品で、聞き取り調査を受けた5例すべてがこれを食しており、このうち4例が同じスーパーマーケットチェーンに属する店からこの食品を購入していた。リステリアセンターではこの食品と、食品工場の両方から同一のリステリア菌を検出した。この食品加工場は衛生面と素材の両方で品質管理に問題があり、2000年1月6日に製造者はすべての製品をリコールした。同日EU参加国すべてに食品迅速警報システム(Rapid Alert System For Food; RASFF)により警報が発せられた。分析によるとこの製品はフランスからベルギー、ルクセンブルク、ドイツ、アイルランド、スペインに輸出されていた。1月14日になってこの製品がベルギーの業者を通してイギリスとオランダに輸出されていたことがわかった。

消費者は汚染食品を廃棄するよう指導された。しかし、汚染食品を食べた後の感染確率は非常に低いため、汚染食品をを食べたとしても直ちに医療機関を受診する必要なはく、発熱、あるいは頭痛を伴う発熱などの症状が現れた場合には医療機関を受診し、汚染食品を摂取したことを申告するように指導された。リステリア症は潜伏期間が長いため(4日〜2カ月)、リコールが順調に施行されても、その数週間後まで症例が増えることも考えられる。

(Eurosurveillance Weekly、 No.3、 2000)

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