手足口病患者からのエンテロウイルス71型の分離状況、1999年−北九州市
本市では、1999年10月下旬〜12月中旬までの2カ月間に手足口病と診断された10検体すべてからエンテロウイルス71型(EV71)を分離した。検体は、市内の小児科定点から搬入された咽頭ぬぐい液で、10月1件、11月5件、12月4件の計10件であった。分離された10株はいずれもVero細胞で4〜7代の継代後CPEを認めた。中和反応はVero細胞を用い、国立感染症研究所より分与された抗血清を使用した。なお、ヘルパンギーナと診断された患者からはEV71が分離されなかった。
患者の年齢は、1歳2名、2歳3名、3歳3名、6歳1名、7歳1名と3歳以下が8割を占めており、性別は男5名、女5名である。症状は、発疹・口内炎が10名全員に共通しているが、そのうち2名は胃腸炎を併発していた。
過去5年間、本市での手足口病の流行はいずれも5〜9月に発生しており、冬季の流行はなかった。また、EV71は散発的に1996年12月に1株、1998年6月に1株の2株分離されており、今回のように多数分離されたのは初めてである。
1999年5〜9月まで手足口病の定点当たりの患者数は、北九州地区では全国平均の30%と低く、平年で見られるピークが北九州地区では見られなかった。この期間のウイルス分離は、手足口病と診断された検体はコクサッキーA(CA)6が5株、CA16、エコーウイルス6型、EV71それぞれ1株であり、一方ヘルパンギーナと診断された検体ではCA6が17株、CA未同定が4株、CA4、CA5、HSV1がそれぞれ1株分離されている。逆に10月に入ると手足口病の患者数は全国の2〜3倍に増加しており(図)、手足口病の地域的な流行が発生しEV71が主な病原ウイルスであったと推測された。
北九州市環境科学研究所 山本康之 木村尚志 高橋正規