インフルエンザウイルスA香港型感染による急性壊死性脳症患者(10歳男児)死亡例−香川県
(Vol. 21 p 97-98)

今シーズン(1999/2000)、急性壊死性脳症と診断された患児(10歳・男)からインフルエンザAH3(香港)型ウイルスが分離同定された。

2000(平成12)年3月13日に鼻汁と糞便が採取され、MDCK細胞を用いた通常法で鼻汁からA香港型ウイルスが分離された。なお髄液は採取されなかった。

患児は同日死亡した。その経過は以下のとおりである。

 現病歴:3月9日より父親が38〜40℃の発熱、11日より患児も発熱し、初め37.5℃程度であったが、夕方より高熱となり解熱剤を服用した。12日17時頃悪寒が強く、嘔吐あり、「地震で体が揺れている感じがする」と訴えた。

近医受診中にいびき様の呼吸をし、喘鳴あり、意識障害を来した。輸液を施行し、19時30分当病院救急外来に搬送され、ICU に入室した。

 入院時現症:意識状態 半昏睡(JCS 200)、せんもう状態、呼吸数80〜90回/分、体温40.7℃、心拍数 207/分、発汗多量、鼻出血、瞳孔 3mm、対光反射(+)、酸素マスクにて SpO2 98〜100%、胸部 呼吸音正常、腹部異常なし。

 入院時検査:WBC 3,190/μl、RBC 485万/μl、Hb 13.0g/dl、Ht 39.8%、Plt 19.2万/μl、白血球分類(St 2.0%、 Seg 37.0%、 Mo 3.0%、 Lym 58.0%)、TP 7.4g/dl、 GOT 146IU/L 、 GPT 131IU/L、 LDH 488IU/L、 ALP 580IU/L、 T-Bil 0.16mg/dl、 BUN 12.1mg/dl、 Cr 1.1mg/dl、 Na 141mEq/L、 K 4.6mEq/L、 Cl 116mEq/L、 Ca 8.9mg/dl、 Glucose 141 mg/dl、 CPK 164IU/L、 アンモニア 71μg/dl、乳酸52.5mg/dl、ピルビン酸 2.27mg/dl、 CRP 2.78mg/dl、ウイルス抗体価(インフルエンザA/B型、日本脳炎、HSVすべて陰性)、血液ガス分析(pH 7.312、 pCO2 37.7、pO2 43.1、 HCO3 18.5、BE -6.6、静脈血)、脳波(全般性高振幅徐波が持続)、MRI(T1強調画像にて両側視床、脳幹に低信号域を認め、T2強調画像にて両側視床、脳幹、小脳、大脳基底核、大脳に高信号域を認めた)。

 入院後経過:意識障害が継続し、鼻出血、水様下痢、血便、気管内出血、尿潜血(+++)等全身の出血傾向を認めた。両手の間代性痙攣、後弓反張姿勢を認めた。

13日2時頃よりやや安定したが、4時30分頃より高血圧、頻脈を示し、5時50分低血圧となり、7時29分死亡した。

第10週における香川県下のインフルエンザウイルスの状況は、定点あたりの患者数2.63人で流行も終息の域にあるが、ウイルスは低率ながらA香港型、Aソ連型ともに分離されている。

国立療養所香川小児病院小児科 遠藤彰一 岡田隆滋 古川正強
香川県衛生研究所 亀山妙子 三木一男 山西重機

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