ノーウォーク様ウイルス(NLV)による胃腸炎の集団発生、1999年−米国・アラスカ州、ウィスコンシン州
(Vol. 21 p 99-99)
1999年11月10日、アラスカ州アンカレッジ市の企業で、従業員500名のうち20%が腹痛、嘔吐、下痢などの急性胃腸炎症状を呈した。11月8日にレストランの出店による昼食会があったため、全従業員に対して電子メールによる質問票の送付とクレジットカードの領収書による喫食調査が行われた。191名が症例の定義に該当し、原因食材としてポテトサラダが強く疑われた。患者従業員11名、発症した調理関係者3名とレストラン管理者2名に対し検便が実施され、細菌分離は認めなかったものの、CDCで行ったRT-PCR法でNLV陽性となった。うち患者従業員1名、調理関係者1名、レストラン管理者1名のNLV核酸塩基配列は同一であった。
1999年11月30日〜12月1日にかけて、ウィスコンシン州の共用便所のある学生寮の同じ階で、大学生7名が嘔吐、下痢など急性胃腸炎の症状を呈した。同階に住む36名全員について、症状、行事参加、喫食歴が質問され、検便が実施された。うち19名が症例定義に合致し、時系列から4群に分けられた。初発と疑われる症例には、28日午後7時〜29日午前6:30の間に複数の下痢と嘔吐の既往があった。12名は30日昼〜1日昼にかけて発病しており、二次感染と考えられた。三次感染例は1日昼〜2日昼に5名が発病しており、残る1名は3日早朝に発病している。発病期間の平均は約24時間(3.5〜33時間)であった。行事、食事、食べ物や飲み物に疾病と関連するものはなかった。二次感染の1名と三次感染の3名が、発病する36時間以前に、他人が嘔吐する近くにいた。
MMWR編集後記によれば、米国のNLV感染は、カキ以外の食品由来37%、ヒト−ヒト伝播20%、カキ由来10%、水6%、不明27%となっている。学生寮の事例は、近接して居住し、便所を共用していたので、食品を介さない直接的な伝播が最も考え得るが、特に三次感染症例では、吐物の飛沫感染がNLVの伝播に相当関係していると考えられる。
(CDC、 MMWR、 49、 No.10、 207、 2000)