1996〜1999年までの期間に長崎大学熱帯医学研究所に紹介された日本人海外旅行者におけるデング輸入症例の動向
(Vol.21 p 116-116)
近年、日本人海外渡航者の増加により、海外から外来性の感染症が日本に持ち込まれる機会が増加している。熱帯地域から帰国した日本人旅行者における不明熱の場合、マラリア、腸チフスと並んでデング熱・デング出血熱は鑑別診断として重要であり、本研究所は本邦においてデング感染症の実験室診断のサービスを提供している数少ない機関の1つである。
1996〜1999年の間に本研究所へデングウイルスの血清診断を依頼された検体のうち、陽性であった患者数は1996年2例、1997年8例、1998年7例、1999年0例であった。1997年と1998年のエルニーニョ期間中はアジア・太平洋の各国でデング患者が増加した時期であり、陽性患者数の増減はデング流行地域の状況を反映したものと推測される。
上記の期間においては幸い死亡例は発生していないが、明らかに重症のデング出血熱と診断される患者も発生しており、適切な患者の管理がなされない場合は死亡者が発生する可能性もあり、臨床家への注意喚起の強化が必要であると思われる。実際の症例として、デング出血熱の発症と月経とが重なってしまった女性患者の例では、大量の出血により心臓停止に及んだ症例もあった。
長崎大学熱帯医学研究所 五十嵐 章 森田公一 長谷部 太