成田空港検疫所において診断されたデングウイルス感染症例
(Vol.21 p 116-116)
近年、旅行や仕事等で流行地の熱帯地域を訪れる日本人が増えており、デングウイルスに感染して帰国する、いわゆる輸入デングウイルス感染症例も増加傾向にある。しかし、デングウイルスがわが国に常在しないため、早期診断治療が十分に行われる体制とはなっていない。成田空港検疫所においては、デング熱流行地への渡航者に対し情報提供を行なっているが、さらに1998年より、入国時点でデング熱が疑われる旅行者に対しスクリーニング検査を行い、デングウイルス感染と診断された場合には、充分な情報提供と指導を行うとともに適切な医療機関を紹介している。検査実施対象者は、原則としてデング熱流行地域に1泊以上滞在した有熱者であり、潜伏期間等からデング熱・デング出血熱が鑑別診断の1つとして疑われ、さらに本検査の主旨を理解して検査を希望する入国者である。
検疫医療専門職が採血室で採血し、検査課検査室において検査を行った。検査方法はキットを用いた迅速検査(Rapid Immunochromatographic Test)によるIgMおよびIgG抗体の検出とRT-PCRによるウイルス遺伝子の検出である。陽性と判定された検体は、さらに国立感染症研究所ウイルス第1部において、同様の検査法とELISA法、HI法にて再検査され陽性を確認した。
1998年には31検体が検査され、その結果8例が陽性であった。これらの陽性例はいずれも東南アジアからの帰国者で、タイ4例、インドネシア2例、マレーシア1例、シンガポール1例であった。このうち型別が確認されたものは、デングウイルス2型が2例、3型が1例であった。1999年には20検体が検査され、1例が陽性であった。この検体の型別は確定できなかった。年により陽性率に差はあるが、1998年には約1/4がデングウイルス感染であったことは注目される。
年間約500万の日本人が熱帯地域に旅行し、約200万の人達が熱帯地域から日本に入国している現状を考え合わせると、輸入感染症としてのデング熱の検査・診断は益々重要であると考えられる。
成田空港検疫所 長谷川眞住 鈴木大輔
国立感染症研究所ウイルス第一部 山田堅一郎 高崎智彦 倉根一郎