埼玉県内産の豚からのインフルエンザウイルス分離
(Vol.21 p 120-120)
我々は、1999/2000インフルエンザ流行シーズンに合わせて、豚からのインフルエンザウイルス分離を実施した。以下に概要を報告する。
1999(平成11)年10月〜2000(平成12)年3月までの6カ月間に、県内の1屠畜場において、生体検査で異常が認められなかった、主として約6カ月齢の肉用豚の屠殺直後に、鼻腔あるいは咽頭より検体を採取した。検体採取は、毎週12頭、6カ月間で合計300頭(県内産130頭および県外産170頭)を実施した。採取した検体は、抗生物質処理後にMDCK細胞へ接種して、34℃で培養した。盲継代は、2代実施した。
調査開始〜2000年2月上旬までの検体は、すべて陰性であった。ところが、2000年2月21日に採取した県内の1養豚場から出荷された4頭のうち3頭から、インフルエンザウイルス様のCPE を呈する「HA agent」(以下「豚分離株」)を検出した。豚分離株は、3株ともに「ディレクティジェン FluA」陽性であり、電子顕微鏡像では、ヒト由来のインフルエンザウイルスと同様に、スパイクを周囲に持つ粒子が観察された。また、モルモットおよびニワトリ赤血球凝集能を有していた[我々が、1999/2000シーズンにヒトから分離したA(H1)型ウイルスはニワトリ赤血球凝集能を保持している株と、いない株が混在していた]。しかし豚分離株は、近年のヒト型A(H1)およびA(H3)型ウイルスに対する抗血清には全く反応しなかった。
豚分離株を国立感染症研究所呼吸器系ウイルス室へ送付し、同定を依頼したところ、A/Swine/Iowa/15/30(H1N1)に対する抗血清に反応した、との連絡を受けた。現在、同室にてさらに詳細な分析を実施中である。
埼玉県衛生研究所 島田慎一 篠原美千代 内田和江 瀬川由加里
埼玉県中央食肉衛生検査センター 大塚孝康 門脇奈津子