インド、東南アジア旅行者からのSalmonella Typhiの検出状況
(Vol. 21 p 117-117)
2000年4月〜5月上旬にかけて、インド、東南アジア旅行者からのSalmonella Typhiの検出が増加している。この期間に17名の腸チフス患者の発生が全国から報告された(表)。これらの腸チフス患者は全員海外渡航歴があり、渡航先は主にインド、東南アジアで、渡航先で感染したものと考えられた。患者のほとんどが20歳代で、春休みを利用した海外旅行での感染であった。
分離されたS. Typhiのファージ型は多くがE1であったが、ファージ型E1のチフス菌は主にインドへの渡航者から分離され、アンピシリン、クロラムフェニコールなど従来腸チフスの治療に使われていた抗生物質が効かない薬剤耐性チフス菌が多い。さらに、これら多剤耐性チフス菌には、現在の腸チフス・パラチフスの治療の第1選択薬であるニューキノロン剤も効きにくいことがある。
インドへ旅行する人は現地での水や食べ物には十分注意をする必要がある。
国立感染症研究所細菌部 広瀬健二 田村和満 渡辺治雄