身体障害者施設内で発生したA群ロタウイルス感染症−神戸市
(Vol.21 p 144-144)

2000年4月13日〜20日にかけて、神戸市内にある身体障害者施設において、嘔吐・下痢を主訴とする胃腸炎が発生した。当該施設には、95名(男性56名、女性39名)が入居しており、この間に24名が嘔吐・下痢といった異常を訴えた。便を回収できた21検体をロタクロン(TFB)で検査したところ、14検体からロタウイルスを検出、残る7検体からはロタウイルスは検出されなかった。すべての検体において、小型球形ウイルス、アデノウイルス、下痢原性細菌は検出されなかった。

ロタウイルス陽性の4検体について、ロタ-MA(セロテック)とロタクロンによるサンドイッチ法で血清型を調査したところ、いずれもA群血清型2であった。また、A群血清型2に特異的にみられる第11分節dsRNAのPAGE上でのショートパターンを確認した。

当該施設の入居者の障害は、身体障害、視覚障害、聴覚障害、知的障害などさまざまである。感染者に共通した(特異的な)障害は見つからなかった。入居者の年齢は、37〜85歳で、平均年齢(±SD)は62.3(±9.0)であった。一方、14名(男性7名、女性7名)の感染者の年齢は50〜79歳、平均年齢は64.7(±10.2)であった。A群ロタウイルスは、小児の間で流行することが多いが、今回は比較的高齢者の間で起こった。

ロタウイルス感染が確認された14名の発症日は、4月13日(2名)、14日(1名)、15日(1名)、16日(2名)、17日(4名)、19日(2名)、20日(2名)であった。当該施設は2階建てになっており、ロタウイルス感染が確認された人は、1階の入居者が10名、2階の入居者が4名であった。すべての部屋は2名用に設計されており、トイレは共同利用するようになっていた。トイレは和式・洋式両方が用意されており、洋式便座は洗浄機能付のものが設置されていた。洗面所、食堂、娯楽室なども共同利用であった。入居者は、エレベーターまたは階段で、1階と2階を自由に行き来することが認められていた。当該施設の調理従事者8名の検便も実施したが、いずれもロタウイルス陰性であった。

以上の成績およびロタウイルスの潜伏期間を考え合わせると、何らかのルートで当該施設内に持ち込まれたロタウイルスが、吐瀉物を介して施設内で広がっていったものと考えられる。なお、最初の患者の発生原因が、施設内での喫食に起因するか否かを明らかにするには至らなかった。また、今回の感染が身体障害者施設という特殊な環境に起因するものか否かは今後の検討課題である。

神戸市環境保健研究所 大石英明 奴久妻聡一 飯島義雄

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