環境の腸炎ビブリオ検査
(Vol.21 p 147-148)

「腸炎ビブリオ食中毒の発生予測・予防対策構築に関する研究」に参加し、1996年以降発生頻度の増加した腸炎ビブリオの感染源調査を行った。その結果、検体中からTDH陽性の腸炎ビブリオを検出したのでその検出経緯等について報告する。

期間は1999年6月〜12月までの7カ月間、検体採取は毎月1回、2地点で海水、海泥を採取し、延べ28検体について調査を行った(図)

定性的検査は海水100mlに食塩ポリミキシンブイヨン(以下SPB)粉末3.3gを投入、また海泥20gには食塩ポリミキシンブイヨン180mlを入れ、攪拌した後、それぞれを37℃18時間培養した。定量的検査では定性検査で調製した検体を3管法(SPB)でMPNを測定した。定性培養液をPCR 法にてTox R、 TDH、 TRHの各遺伝子の検索を行い、TDH、 TRH遺伝子が陽性の場合には定量培養液においても同様にPCRを行いMPNを算出した。

TDH、 TRH遺伝子の陽性株を分離するためにTCBS培地で培養後、疑わしいコロニー約50個を釣菌し、TDH遺伝子については我妻培地、TRH遺伝子はクリステンゼン尿素培地で確認後、生化学性状と血清型別を行い、再度それぞれの遺伝子の確認を行った。Tox R遺伝子のみが陽性の培養液はTCBS培地で分離後、5〜10個のコロニーについて腸炎ビブリオの確認をした。また、定量培養液についてもPCR法でTox R遺伝子を確認しMPNを算出した。

その結果、U岬の海水からはTox R遺伝子のみが検出され、TDH、 TRH遺伝子は検出されなかった。海泥からはTox R遺伝子が毎月検出されたが、TRH遺伝子は検出されなかった。TDH遺伝子は6、10月以外の検体から検出されたが、TDH陽性の腸炎ビブリオは分離されなかった。

I地区の海水からはTox R遺伝子のみが検出され、他の遺伝子は検出されなかった。また、海泥からは全期間Tox R遺伝子が確認され、6、7月を除いた検体からはTDH遺伝子が検出されたが、TRH遺伝子は検出されなかった。TDH遺伝子が検出された検体のコロニーについて我妻培地での溶血性の確認をしたところ、12月の検体から陽性菌が2株分離され、血清型はそれぞれO3:K6およびO3:K7であった。これら菌株はPCRでもTDH遺伝子が確認された。

TDH陽性の腸炎ビブリオが分離された地点は、河川水が流入する汽水域で、砂よりも泥の多い地点であった。

福島県衛生公害研究所細菌科 廣瀬昌子 須釜久美子 力田正二 加藤一夫
福島県会津保健所会津坂下支所 氏家悦男

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