アレルギー様食中毒、 1998年−米国・ペンシルバニア州
(Vol. 21 p 149-149)
1998年12月3日、4名の成人がレストランでマグロとほうれん草のサラダを食して約5分〜2時間後に口の中の痛み、金属様の味、顔面の紅潮、嘔気、下痢、発汗、頭痛などの症状を呈した。彼らの症状は数時間のうちに治まった。レストランから得られた魚の残品は検査のためペンシルバニア保健局(PDOH)に送られた。サンプルは大腸菌陽性で、ヒスタミン値は50ppm以上を示し陽性であった(鮮魚は10ppm以下のヒスタミン値が正常)。
ペンシルバニア州チェスター郡保健局(CCHD)とペンシルバニア州農業局(PDAg)はマグロの追跡調査を行った。卸から小売までの流れは国・州・市を越え5つの輸送業者と4つの加工業者が関わっていた。マグロは商業漁船によりメキシコ湾で1998年11月後半に捕獲されていた。はえ縄漁法が用いられていたが、魚が捕らえられた海水温は25.8℃であった。氷冷槽のマグロの平均温度は0〜1℃で、卸業者は11月27日に積荷を受け取ったが、その際の魚の平均温度は2℃であったと記録されている。レストランに11月27日に配達された切り身はさらに30に分割され冷凍庫に保存、必要に応じて解凍のために取り出された。病気であることを報告した4名だけが12月3日にマグロとほうれん草のサラダを喫食していた。
すべての関連漁業設備は定期的に米国食品医薬品局(FDA)単独もしくはPDAgとの共同によって査察を受け、危険分析や重要な管理上の要点(HACCP)に関する講習を修得しており、HACCPに示されているマグロの卸業者から小売までの分配の方式から逸脱してはいなかった。しかし、はえ縄漁法に関してはFDAが定めた海産物のHACCP規則の範囲から外れていた。つまり、魚を釣り上げ船上に放すまでの時間はHACCPの範疇になく、ヒスタミンは魚が温かい海中で長時間吊るされている間にも発生したかもしれない。
scombrotoxinの形成は、魚が釣られた後レストランで提供されるまでの流通経路のある部分での操作手技の結果かもしれない。scombrotoxinを形成しやすいコンディションを避けるために、すべてのscombrotoxinを産生しうる魚に関しては、釣り上げられた時から料理されるまで継続的に冷凍したり0℃以下の冷蔵状態を保つことである。
(CDC、 MMWR、 49、 No.18、 398-400、 2000)