筑前煮を原因とするウェルシュ菌の集団食中毒事例−新潟県
(Vol.21 p 165-165)

2000年5月22日、M町役場から相川保健所に5月21日同町の旅館で調製した弁当および料理を喫食した者が、下痢、腹痛等の食中毒症状を呈している旨、電話連絡があった。

同保健所で調査したところ、21日に当該旅館で調製した料理を喫食したグループはA、B、Cの3グループで、A、Bの2グループは12時に喫食し、Cグループは17時に喫食した。そのうちA、Bグループが発症し、Cグループからの発症者はいなかった。Aグループは48名中41名(85%)が発症し、潜伏時間は5〜24時間、ピークは11〜17時間であった。また、Bグループは45名中34名(76%)が発症し、潜伏時間は10〜28時間、ピークは15〜16時間であり、両グループ合わせて93名中75名(81%)が発症した。喫食調査を行った結果、A、B両グループの共通食は筑前煮であり、Cグループは筑前煮を喫食していないことから、本品を原因とする集団食中毒を疑い検査を開始した。

同保健所で検食9件、器具、手指のふきとり5件、調理従事者便5件および患者便31件、計50件について、原因菌の検索を行った。その結果、検食の筑前煮と調理従事者便各1件および患者便30件からウェルシュ菌が検出された。ウェルシュ菌の分離方法は、検食、器具、手指のふきとりについてはTGC 培地で増菌培養後、KM不含卵黄加CW寒天培地に接種し、調理従事者便および患者便については、85℃10分加熱処理後、KM含有卵黄加CW寒天培地に接種し、本菌を分離した。

保健環境科学研究所で分離菌株についてHobbs血清型別およびエンテロトキシン産生能の検査を行ったところ、筑前煮および患者便由来株はすべてHobbs6型、エンテロトキシン(+)であったが、調理従事者便は型別不能、エンテロトキシン(−)であった。エンテロトキシン産生能については、大谷らの変法DS培地を用いたRPLA法(デンカ生研)とPCR法(TaKaRa)により確認した。

食中毒の原因となった筑前煮は里芋、ニンジン、レンコン、インゲン、タケノコ、シイタケおよび鶏肉が使用されていたが、原材料は残っていなかったため感染経路は不明であった。本品は、前日調理し、放冷後冷蔵保管し、事故当日蒸し器で10分程度再加熱したものであるが、調理後の温度管理不良および不十分な再加熱がウェルシュ菌の増殖につながり食中毒が発生したものと考えられた。

新潟県保健環境科学研究所
紫竹美和子 川瀬雅雄 白幡祐子 大野祥子 不二崎順二 寺尾通徳
新潟県相川保健所 青木順子 渡邉忠武 本間一夫

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