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デング熱/デング出血熱の現況−WHO
(Vol. 21 p 171-172)
デング熱(以下DF)/デング出血熱(以下DHF)は、国際的な公衆衛生の分野で近年大きな問題となりつつある、蚊が媒介する感染症である。地理的分布は爆発的に拡大し、過去30年間で患者数は劇的に増加した。現在 100カ国以上で流行し、世界人口の40%(25億人)、特に熱帯・亜熱帯地域、そして都市部や都市近郊で、多くの人々がその脅威にされされている。1998年にはWHOに、年間では最高の 120万人の症例が報告された。年間5千万人のDF患者(致死的な合併症として1950年代に最初に認識され、今日ではアジアの一部の国々での小児死亡の主要な原因となっているDHF 患者40万人を含む)が推定されている。DF/DHF患者数増加の原因には、人口増加と、適切な治水管理を欠く都市化、旅行や貿易によるデングウイルスの拡散、ベクターコントロール計画が進まないことがあげられる。
デングウイルスには4つの血清型があり、1つの型の感染はその型のみにしか防御免疫を高めない。そのため、1人の人間が複数回のDFに罹り得る。発熱、筋肉疲弊と痛みがDFの特徴であるが、出血性の合併症やショック(DHF)という結果になることもある。DHFに増悪するリスクは初回感染時には大体0.2%だが、次に別の血清型のウイルスに感染した際には10倍高まる。正しい治療がなされなければDHFの死亡率は15%になる。特異療法はないが、集中的な支持療法で死亡率を1%以下に低下させることができる。ワクチンの開発は困難である。なぜなら、ワクチンは4つのすべての型に対して防御免疫を高めなければならないからである。さもないとワクチン接種者にはDHFのリスクが高まる可能性がある。媒介蚊のコントロールが現在のところ唯一のDF/DHFを減少させる方法である。
DFの流行が一旦確立されてしまうと、その流行をコントロールすることは困難である。そこで、疾患の活動性(患者数)が上向きになったことを最初に検出した際にコントロールを実践することが重要である。このために、有効な疾患サーベイランスと介入計画とが必要とされる。血液採取から検査、結果の報告と解析を行うようなサーベイランスを支えるシステムも流行の兆しを知るために使用できる。
DFを制圧するための活動は、現在WHOで再び強化されている。1999年10月、デングの専門家らは、持続的でかつ有効なコントロールプログラムと教育法を開発するために公的・私的機関の連携を図ること、DFによる死者数を減じるためにWHOの標準的な臨床管理実施要項の使用を勧告した。デングに関する研究は、熱帯医学の研究と教育に関する特別プログラムの条項に加えられた。WHOは有効かつ安全なデングワクチン開発を指示し、世界的なデングサーベイランスの強化と集団発生対応へも乗り出しつつある。
(WHO、 WER、 75、 No.24、 193-196、 2000)