エコーウイルス9型の分離状況−宮崎県
(Vol. 21 p 168-169)
宮崎県では6月に入ってエコーウイルス9型(以下E9)の分離数が増加し、6月末までに57株が分離されている。E9が分離された患者のほとんどが発疹症の小児(0歳〜13歳)で、平均年齢は2歳で性差はない。また、散発例が主であるが、57件中15件は保育所や幼稚園で集団発生しており、さらに9件は家族内の同胞間で発生している。臨床症状は発熱(平均38.5℃)、発疹(丘疹、紅斑)、上気道炎(咽頭発赤、咽頭炎)を主訴とし、臨床的に風疹、溶連菌感染症と紛らわしい場合もある。また、発疹症以外では無菌性髄膜炎の13歳の患者から1株分離されている。
E9が分離された患者材料は無菌性髄膜炎患者からの髄液1件以外はすべて咽頭ぬぐい液もしくは鼻汁で、平均3病日、最長7病日の材料から分離された。細胞はCaCo-2、Vero、HeLaの3種類を用いたが、CaCo-2細胞が最も感受性がよく、細胞変性効果(CPE)は検体接種後2〜3日で明瞭となり、57株すべて2代以内に検出された。
宮崎県では、2000年1月〜6月末までに83株のエンテロ系ウイルスを分離しているが、特にE9は、流行閑期である本年1月の冬季より既に分離され始めていたこと、過去のウイルス分離状況で1994年、1997年と3年の間隔で分離されていたことから、2000年の夏季に流行する可能性のあるエンテロウイルスとして注目していた。なお、過去の分離状況では乳幼児期では発疹症を起こしやすく、幼、学童期では無菌性髄膜炎を起こしやすい傾向があった。現在のところ、無菌性髄膜炎の患者は1例のみであるが、今後の動向に注意したい。
なお、6月末までにE9以外では発疹症の小児からエコーウイルス25型(以下E25)が22株分離されている。臨床所見から両型を明確に区別することは困難であるが、E25が分離された小児(0歳〜2歳)では0歳児が9件(41%)あり、E9と比べて罹患年齢が低い傾向にある。
宮崎県衛生環境研究所ウイルス科 吉野修司 木添和博 山本正悟
〃 企画管理課 岩城詩子