牛生レバー喫食後の腸管出血性大腸菌O157感染発症事例の続発−和歌山市
(Vol. 21 p 164-165)
2000年5月以降、和歌山市および県内近隣市町村において腸管出血性大腸菌(EHEC)O157感染発症事例が続発している。5月には5事例発生し、患者および感染者は14名に及んだ。すべての事例で、患者の発病前1週間以内に飲食店で焼肉を喫食していたが、4事例では牛生レバーを喫食していたことが判明した。
5事例のうちの2事例(別々の飲食店で喫食)は、患者および感染者からVT1、VT2両産生のO157:H7が検出されたが、事例間でパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)によるDNAの制限酵素切断パターンおよび薬剤耐性パターンは異なっていた。
他の3事例は、患者および感染者からVT2 単独産生のO157:H7 が検出された。それぞれの患者は発病する前に、同一チェーンの焼肉店(2カ所)で喫食していた。施設のふきとり検査、食材(患者が喫食したものとは別ロット)の検査および従業員の検便でO157は検出されなかった。しかし、両店の食材が同じ食材センターから配送されていたこと、分離された菌株のPFGEパターンおよび薬剤耐性パターン等の性状が各事例間で一致したことから、両焼肉店が原因施設であると推察された。
6月に入ってからも、牛生レバー喫食後のO157(VT1 ・VT2 両産生)による感染発症事例が1例発生しており、現在、PFGE等により解析中である。
なお、上述の患者および感染者のほとんどが牛生レバーを喫食していたことから、EHEC O157感染症を予防する上で、生レバー等生肉の喫食を避ける必要がある。
和歌山市衛生研究所
森野吉晴 山下晃司 金澤祐子 上野美知 太田裕元
北口三知世 岩崎恵子 辻澤恵都子 旅田一衞