<通知> 建築物等におけるレジオネラ症防止対策について
(Vol.21 p 192-193)

生衛発第1679号
平成11年11月26日

  都道府県知事
各        殿
  政令市市長

厚生省生活衛生局長

建築物等におけるレジオネラ症防止対策については、「建築物における冷却塔等の衛生確保について」(平成8年9月13日衛企第113号本職通知)により行われているところであるが、先般、都内の特別養護老人ホームにおいて使用されていた循環式浴槽を感染源とするレジオネラ症患者が発生し、うち1名がレジオネラ肺炎で死亡したという報告があった。このような設備は、適切な維持管理をしなければ、一般に抵抗力の弱い者等に対しレジオネラ症の感染源となるおそれがあるため、当面の対策として、改めて下記のとおり留意事項を定めたので、関係部局間における連携を確保しつつ、貴管下関係行政機関及び関係者に対する指導に遺漏なきを期されたい。

なお、本通知の内容は厚生省大臣官房障害保健福祉部、健康政策局、医薬安全局、社会・援護局、老人保健福祉局及び児童家庭局と協議済みであることを申し添える。

1.建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)に規定する特定建築物については、特定建築物の維持管理権原者に対し、レジオネラ属菌に関する知識の普及、啓発を行うとともに、レジオネラ属菌の増殖を抑制する具体的方法としては、
 (1)空調設備の冷却塔及び冷却水系については、「中央管理方式の空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」(昭和57年厚生省告示第194号)、「中央管理方式の空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準(告示)に規定する別に定める基準について」(昭和58年環企第27号厚生省環境衛生局長通知)及び「建築物における衛生的環境の維持管理について」(昭和58年環企第28号厚生省環境衛生局長通知)(以下「告示等」という。)に基づき、冷却水の交換、消毒及び清掃を行うこと、
 (2)給水設備については、告示等に基づき、定期に給水設備の消毒及び清掃を行うとともに、外部からのレジオネラ属菌の侵入防止に努めること、
 (3)給湯設備については、給湯温度の適正な管理及び給湯設備内における給湯水の滞留の防止に努め、定期に給湯設備の消毒及び清掃を行うこと、
 (4)循環式浴槽(特に生物浄化方式のもの)については、定期に換水、消毒及び清掃を行うとともに、浴槽水のシャワーへの使用や気泡ジェット等のエアロゾル発生器具の使用を避けること、
 (5)加湿装置については、当該設備に用いる水が水道法(昭和32年法律第 177号)第4条に規定する水質基準に準ずるものとするとともに、定期に水抜き及び清掃を行うこと、
 (6)装飾用噴水等その他の設備については、定期に当該設備の消毒及び清掃を行うこと
があることについて指導されたいこと。

2.病院、老人保健施設、社会福祉施設等特定建築物以外の建築物についても、1.に準じて所有者、占有者その他の者で当該施設の維持管理の権原を有する者に対し、レジオネラ属菌に関する知識の普及、啓発に努めるとともに、維持管理に関する相談等に応じ、必要な指導等を行われたいこと。

3.家庭で用いられる循環式浴槽(いわゆる24時間風呂)及び加湿器についても、1.に準じて住民一般に対し、レジオネラ属菌に関する知識の普及、啓発に努めるとともに、維持管理に関する相談等に応じ、必要な指導等を行われたいこと。

4.建築物等におけるレジオネラ属菌の繁殖の抑制に関しては、平成9年度厚生科学研究費補助金による「シックビル症候群に関する研究(主任研究者小川 博)」の報告書を踏まえて、平成11年11月に財団法人ビル管理教育センターがとりまとめた「新版レジオネラ症防止指針」を参考にされたいこと。

<資料> レジオネラ属菌の検査について

「新版レジオネラ症防止指針」(概要)http://www.mhw.go.jp/houdou/1111/h1126-2_13.htmlより抜粋

 1)レジオネラ属菌の感染因子の点数化
レジオネラ属菌による感染については個体差、体調等を考慮すると、レジオネラ症を引き起こす危険のある菌数や感染を起こさない安全な菌数について明言することはできない。そのため、レジオネラ症予防のためには人工環境水中のレジオネラ属菌をできる限り少なくすることが重要である。

そこで、危険度を(1)エアロゾル化、(2)環境及び(3)宿主側の3つの要因に分けて、それぞれ点数化を行い、その合計点でもってその状況下における対応を示すこととした(表1)。

ただし、点数化はあくまでも目安であること、集団を対象とする場合には絶対的なスコア化は不可能であること、危険度に応じて細菌検査の回数を提案し、菌が陽性であった場合には必ず清掃・消毒を行い検出限界(10CFU/100ml)以下とすることを目標とするが、必ずしも年間を通じて検出限界値以下であることを求めたものではないこと等に留意し、施設の管理者が状況に応じて判断した上で対応することが求められる。

 2)感染危険因子の点数化(スコア)と対応
この点数化の具体的な例を参考までに表2に、この点数化に応じたレジオネラの検査回数を表3に示す。 また、検査の結果レジオネラ属菌が検出された場合の対応は以下のとおりである。

 (1)人が直接吸引する可能性のない場合
102CFU/100ml(CFU:Colony Forming Unit)以上のレジオネラ属菌が検出された場合、直ちに清掃・消毒等の対策を講じる。

また、対策実施後は検出菌数が検出限界(10CFU/100ml未満)以下であることを確認する。

 (2)浴槽水、シャワー水等を人が直接吸引するおそれがある場合
レジオネラ属菌数の目標値を10CFU/100ml未満とし、レジオネラ属菌が検出された場合、直ちに清掃・消毒等の対策を講じる。

また、対策実施後は検出菌数が検出限界以下であることを確認する。

(参考文献 厚生省生活衛生局企画課監修「レジオネラ症防止指針」1999、財団法人ビル管理教育センター)

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