インフルエンザ非流行期(8月)のB型インフルエンザウイルスの分離
(Vol.21 p 195-195)
症例はニュージーランド在住の5歳女児で、2000年7月20日〜25日までシドニーに滞在後、7月25日夜より島田市に帰省中であった。7月28日頃より発病し、発熱(40℃)と上気道炎を主訴として、8月3日に市立島田市民病院を受診した。家族等に同様の症状を呈する人はいなかったが、シドニーで熱性疾患が流行していたとの情報からインフルエンザを疑った。検体の咽頭ぬぐい液は、8月3日に採取され、感染症発生動向調査の一環で当研究所に搬入されたもので、8月6日MDCK細胞に接種してウイルス分離に供した。
培養3日目において、細胞変性効果(CPE)が認められ、培養上清のシチメンチョウ血球に対する血球凝集(HA)価は1,024/50μlであった。国立感染症研究所分与の1999/2000シーズン用検査キットを用いてHI試験を行ったところ,抗B/山梨/166/98血清(ホモ価 1:1,280)の抗体価は1:40、抗B/山東/07/97血清(ホモ価 1:80)の抗体価は1:<10であった。
本症例がB型ウイルスに感染したと推定される場所は、インフルエンザ流行シーズン中のシドニーまたは飛行機内が最も疑われるが、入国後9日目に受診していること、その際に採材された咽頭ぬぐい液からウイルスが分離されたこと等から、国内で感染した可能性も考えられる。
静岡県環境衛生科学研究所
佐原啓二 長岡宏美 杉枝正明 秋山眞人
市立島田市民病院 後藤幹生